日本・東京商工会議所は5月25日、「中小企業の働き方改革に関する調査」の集計結果を公表した。全体としては時間外労働の上限規制の範囲内で対応している企業が多数を占めているものの、約2割の企業が上限規制によって「事業運営に制約が生じている」と回答しており、運輸業など特定の業種では事業運営への深刻な影響が顕在化している。取引先からの要請など他律的な要因による業務増加と人手不足に苦悩する現場の声などが寄せられ、時間外労働の上限規制を巡る中小企業の切実な実態が浮き彫りとなった。
同調査は、2019年に施行された働き方改革関連法の施行後5年の見直しに向けた検討が政府で行われていることを踏まえ実施。2026年4月から5月にかけて行われ、324商工会議所の会員企業1724社から回答を得た。 調査結果によると、正社員1人当たりの月間の平均的な時間外労働時間は「20時間未満」と回答した企業が約8割(81.0%)と多数を占めた。
一方で、過去1年間で1カ月当たりの時間外労働が最も多かった正社員の時間外労働時間は「単月45時間以上」と回答した企業が3割近く(25/9%)に上った。さらに、1カ月の時間外労働が45時間超の回数が「5回以上」の従業員がいると回答した企業は約1割(11.7%)となり、運輸業では実に3割超(32.1%)に達した。現場からは、天候や取引先からの要請など他律的な事象への対応により業務が増大、専門・特定業務を行う人材の代替が困難といった声が寄せられた。
時間外労働上限規制によって「事業運営に制約が生じている」企業は全体では約2割(19.1%)だが、現場人材を抱える業種では影響が深刻だ。運輸業(35.7%)、建設業(28.7%)、宿泊・飲食業(24.5%)は特に影響が大きい結果となった。 「事業運営に制約が生じている」企業のうち、売り上げ・収益面への支障として「受注機会の喪失・営業時間短縮などによる売り上げ減少」と回答した企業が4割超(43.2%)となった。人材育成・投資面では「管理職やリーダー層の業務の負担増加と偏在」を訴える企業が6割超(63.2%)に上った。
一方、「収入の維持・向上」「担当業務の完遂や責任」などの理由から、より長く働きたいと希望(もしくは承知)している正社員が、自社に「1割以上いる」と回答した企業は4割超(43.9%)となった。
こうした現場の実態を背景に、時間外労働の上限規制への対応などに向けて政府に求めることとして「変形労働時間制などの繁閑や予期せぬ業務に対応できる柔軟な労働時間制度の実現」を求める企業が約7割(72.6%)に上った。 日商では今回の調査結果を踏まえ、健康確保と労使合意を前提としつつ、より柔軟な働き方を可能とする制度の実現が必要と分析している。
