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こんなときどうする会社の法律Q&A [今月のテーマ]商業登記の申請の必要性について

Q このたび、当社では、新たな代表取締役を選任しました。代表取締役の氏名・住所については、会社の商業登記に記載が必要だと聞いたのですが、登記の申請の必要性について注意点があれば教えてください。

A 商業登記の申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局のうち、商業・法人登記申請の審査事務を取り扱っている法務局で受け付けています。会社を設立する場合や、役員構成など会社の基本情報(登記事項)に変更が生じた場合は、その内容を商業登記に記載しなければなりません。事実と異なる登記をしたり、登記の申請を怠ったりした場合、会社の運営について不利益を受けるほか、代表者個人が処罰されるおそれがあります。

商業登記に関する基本事項

商業登記は、会社の①商号、②本店所在地、③会社設立年月日、④営業目的、⑤発行可能株式および発行済株式の総数、⑥資本金額、⑦役員構成、⑧その他(株式譲渡制限、非業務役員の責任限定契約の有無など)の基本情報(登記事項)を記載した公的な帳簿で、会社の存在や情報確認を可能にし、取引の安全を確保するために設けられています。会社設立や新設合併などの組織再編行為をする場合や、会社の登記事項を変更した場合、会社は当該事項を登記しなければなりません(役員の新任や解任、本店所在地の変更といった純粋な変更行為のほか、役員を重任する場合も登記が必要です)。

登記の懈怠(けたい)および不実の登記に関する制裁・不利益

商業登記は取引安全を確保するために非常に重要なものですから、真実と異なる登記をした場合や、登記の申請を怠った場合、法律によりさまざまな制裁・不利益が課されることになります。

①会社設立等に関する効力不発生…会社設立や、新設合併・新設分割・株式移転といった組織再編行為については、登記の完了が有効要件とされています。そのため、登記を怠った場合、当該行為の効力自体が認められません。

②不実の登記に関する制裁・不利益…真実と異なる登記を行った場合、虚偽登記を作出した代表者などは、公正証書原本不実記載により刑事罰を受けるおそれがあります(刑法157条1項)。また、不実の登記を信頼した第三者には、登記の記載が事実と異なることを主張できません(会社法<以下「法」という>)908条2項)。例えば、実際には会社の代表者でない者を代表者として登記した場合、この人物を代表者と信じて第三者が行った取引は、そのまま会社が契約責任を負うことになります。

③登記の懈怠に関する制裁・不利益…登記事項に変更が生じた場合、会社は、2週間以内に変更登記を申請しなければなりません(法915条1項)。変更登記をせず2週間の期限を徒過した場合、代表者個人に100万円以下の過料の制裁を課すことが定められています(法976条)。実際の運用上、期限の徒過により直ちに過料の制裁を受けるものではないようですが、次に変更登記を申請する際、相当程度の登記の放置が確認されると、裁判所が過料決定を行うことが多いようです。登記の放置期間が長期化すると過料の制裁も増額される傾向にあります。

会社法は、変更登記を行わない場合、変更事項(例:代表取締役等の役員変更・株式譲渡制限の新設)を善意の第三者に対抗できないことも定めています(法908条1項)。例えば、退任した元代表者の退任登記を行わない場合、元代表者が引き続き会社の代表者であると装って契約した行為については、相手方が退任の事実を知らない限り、会社との関係では有効に成立することになります。

登記の懈怠があまりに長期化し、最後に登記があった日から12年を経過した場合、会社が休眠会社として解散扱いを受け、強制的に整理されてしまうこともあります(法472条1項)。2014年以降、法務局では毎年休眠会社の整理作業を実施するようになっているので、登記の管理についてはご注意下さい。 (弁護士・増澤 雄太)

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