日本商工会議所は6月19日、意見書「成長型経済を牽引する『強靭な観光地域づくり』の推進に向けて~激変する環境に対応し、官民連携で新たな付加価値創出を~」を取りまとめた。観光需要の特定地域への偏在、人手不足・物価高騰による供給制約をはじめとした観光産業を取り巻く現状や構造的な課題を踏まえ、地域の個性を生かした高付加価値化による観光の「稼ぐ力」の最大化と、その恩恵が地域全体へ波及する「強靭な観光地域づくり」を実現するため、国が重点的に強化すべき施策について提言している。
現在、日本経済は成長型経済への転換に向けた好機を迎え、国際情勢が不確実な中でも観光産業は、日本経済を支える基幹産業へと拡大している。一方、活発な観光需要は一部の地域に集中しており、その恩恵が地方全体へ広く行き渡っていない。加えて、深刻な人手不足や物価の上昇に伴う供給の限界が地域経済の足かせとなり、観光関連事業者の収益力強化や住民の生活水準の向上に結び付いていない。
また、不安定な中東情勢といった地政学リスクから国際的な人の往来が制限される懸念や、エネルギー・原材料価格の高騰をはじめとした先行きの不透明感が旅行消費を減退させ、地域経済を支える観光産業に大打撃を与えている。 意見書では「こうした局面においてこそ、歴史や文化、自然、食などの豊富な地域資源をはじめとする、わが国の観光が有する質の高さを最大限に生かし、観光が新たな付加価値を創出することで、観光需要による恩恵を地域経済の隅々まで波及させ、観光の基幹産業化を通じて次世代への投資が自律的に循環する『強靭な観光地域づくり』に注力することが求められる」と強調。地域住民と事業者が経済的な豊かさを実感できる体制を構築する必要性を訴えている。
具体的要望としては、中東情勢を踏まえた対策を重点項目として挙げている。足元ではエネルギーや原材料価格の高騰、資材の供給不足、国際的な人流の抑制が観光産業にも深刻な影響を与えていることから、当面の危機を乗り越えるための石油化学製品の安定確保や早期の目詰まり解消に万全を期すとともに、調達先の多角化や省エネ設備の導入など、自己変革に挑む事業者への支援策を求めている。
さらに意見書の柱として①観光の基幹産業化に向けた観光地域づくりの推進②地域一体となった観光地域づくりの体制強化③観光産業の持続的発展に向けた環境整備――の3点を提示した。
①については、地域一体となったブランド形成への強力な後押し、地域住民の郷土愛とウェルビーイング向上に寄与する歴史・文化資源の活用を推進するため、歴史的建造物の再建に向けた規制緩和などを指摘している。②については、地域の観光戦略に位置付けられた民間プロジェクトへの支援強化、外国人材の円滑かつ積極的な受け入れやシニア人材の活躍推進に向けた環境整備を主張。③については、能登地域の観光産業の早期復興に向けた文化財などの早期復旧、観光ビジネスの生産性向上に資する観光DXの推進などを要請している。
