日本商工会議所は3月31日、3月の商工会議所LOBO(早期景気観測)調査結果を発表した。全産業合計の業況DIは、2月から16・4ポイント悪化のマイナス49・0となった。
調査結果では、新型コロナウイルス感染症の影響により、インバウンドを含む観光需要の減少に加え、外出の自粛や消費マインドの低下、イベント中止によるキャンセルで客足が激減した宿泊業や飲食業、観光関連業を中心とするサービス業や小売業の業況感が大幅に悪化した。また、サプライチェーンの混乱や部品、資材などの調達難による生産活動への影響も続いており、新型コロナウイルスの世界的な流行による世界経済の先行き不透明感が広く業況の押し下げ要因となっている。
中小企業の景況感は1989年4月調査開始以来、最大の悪化幅を記録。これまでは、2011年4月時のマイナス11・8ポイントだった。
先行き見通しDIは、3月から7・5ポイント悪化のマイナス56・5。世界的な新型コロナウイルス感染症の流行に伴うインバウンドを含む観光需要の減少、サプライチェーン・生産活動への影響に加え、消費マインドの低迷、消費税率の引き上げ、人手不足による人件費上昇、原材料費上昇、コスト増加分の価格転嫁の遅れ、世界経済の動向など不透明感が増す。中小企業の業況感は11年6月以来のマイナス50台が見込まれ、依然厳しい。
調査期間は3月13〜19日。全国335商工会議所の会員企業2037社から回答を得た。 また、本調査結果とともに、2019年度の所定内賃金(正社員)の動向についても発表した。
19年度に正社員の所定内賃金の引き上げを実施した企業は19年3月調査から1・5ポイント減の63・6%、賃金の引き上げを行わない企業は同1・5ポイント増の36・4%となった。賃上げを実施した企業の内訳では、「業績が改善しているため賃上げを実施(前向きな賃上げ)」が20・8%で同3・5ポイント減少、「業績の改善が見られないが賃上げを実施(防衛的な賃上げ)」が42・8%で同2・0ポイント増加した。
前向きな賃上げ・防衛的な賃上げの実施企業を業種別に見ると、防衛的な賃上げの割合は5業種中製造業、卸売業、小売業の3業種で増加した。減少した建設業とサービス業の2業種では、前向きな賃上げの増加幅は小幅にとどまり、前向きな賃上げ傾向が強まっているとは言い難い。
19年度の賃上げ実施企業は、前年度調査から減少した。7割弱は防衛的な賃上げであり、業績が厳しい中で賃上げを行っている中小企業の実態がうかがえる。
中小企業からは、「働き方改革や従業員確保のため、賃金規定を含む就業規則の見直しを実施した。結果として、大幅なベースアップとなり、今後に不安もあるが、人材流出を防ぐためには仕方がないと考えている」(管工事業)、「業績改善に伴う賃上げを実施したものの、新型コロナウイルスの影響による売り上げ減少で、極めて厳しい状況にある」(旅館業)などの声が寄せられた。
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