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コラム石垣 2018年12月1日号 宇津井輝史

ダイエット中の人は体重計の表示に一喜一憂する。国際貿易から買い物まで、商取引はモノの重さを単位として値段を付ける。タンパク質の質量を精密に測定するのは医療技術の発展に欠かせない。

▼重さと質量は違う。体重60㎏の筆者は、月の世界では10㎏である。月には地球の6分の1の重力しかないためだ。ある量の物体(質量)に重力が働いて発生する2次的な量が「重さ」である▼1キログラムというのは物理学では質量の単位。その物体をはかりに載せたとき、1キログラムと表示するように目盛りを調整しているから質量を「重さ」で代用できる。では、そもそも1キログラムの重さをどう決めたのか。

▼1889年、メートル条約で「これが1キログラム」という白金イリジウム合金製の「国際キログラム原器」が製作(それまでは「4℃の水1リットルの質量」)された。「本尊」はパリに保管され、複製が各国に配られた。だが人工物ゆえ微妙な変化が生じる。ゆらぎのない方法がずっと模索されてきた。

▼たとえば1メートルは「地球の子午線の4分の1の距離の1千万分の1」だったのを「光が単位時間に真空中を進む距離」に再定義され、1秒の定義には原子時計が使われる。他に電流や温度など、基本単位は物理定数に基づく普遍的な定義に次々と置き換えられてきた。ただ一つ取り残されたのが「重さ」だった。合金による方法を上回る技術がなかったためだ。だがついに「そのとき」がやってきた。

▼10月16日、国際度量衡総会が「光に関する物理定数(ブランク定数)」によって1キログラムを定義すると決めた。科学史上画期的な出来事である。シリコン球体の原子数を正確に測定した日本の技術も貢献した。ナノテク分野など、計測技術が新たな未来を拓くだろう。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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