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コラム石垣 2018年12月11日号 丁野朗

国の観光戦略ビジョンでは未活用資源としての文化財の活用が注目されている。その象徴が「日本遺産」である▼地域の歴史的魅力や特色を個々の文化財ではなくて、これら多様な文化財を生み出した地域の歴史・文化の物語に編集し、これを国内外への発信、地域活性化を図ることが目的である。2015年に創設して以来、すでに今年5月までに67の日本遺産物語が誕生している。

▼観光は、いわば「物語消費」としての経験消費である。物語に乏しい地域は旅先として選んでもらえない。その意味で、物語そのものが「地域ブランド」なのである。問題は、これらが真の意味で地域活性化につながっているかどうかである。シンポジウムやポスター、ウェブ制作などはいいとしても、観光を含めた実体的な事業が生まれなければ地域経済への波及は乏しい。

▼その際、政策評価基準(KPI)として、主に観光客数・宿泊客数の増加が用いられる。ただ、日本遺産認定地域は「観光地」ではないケースも少なくない。従ってその成果はなかなか表れにくい。観光は、交通や宿泊、食、ブランドとしての土産物などが不可欠である。さらには、そもそも地域に観光客を受け入れるマインド(おもてなしの心)がなければならない。

▼こうした観光の「装置」は少なくとも10年、景観なども含めた地域づくりには30年の年月を要するのが常識である。従って、経済活性化の指標は、地域実態に沿った多様な指標が必要である。日本遺産ブランドを活用したシルクや綿など地場産品の再生、農業・漁業地域のリノベーションと産業活性化、中心市街地を含む商業の活性化など、地域全体の総合的な活性化が不可欠である。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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