にぎわう環境都市
フライブルクはドイツ南西部、「黒い森」に近い人口約22万の大学都市。トラム・LRT(次世代型路面電車)をはじめとする公共交通や自転車の利便性向上、公共交通指向型の住宅団地開発など、環境政策や交通政策の先進地として紹介されることも多いまちだ。このまちの最大の特徴は、まちなかがにぎわっている点にある。
都市機能が集積したまちなかのにぎわいは、中心市街地の「努力」だけでは実現せず、まち全体、地域全体の中で、特に商業機能の立地を規制・誘導していくことが必要だ。その手法は大きく2種類あり、ひとつは都市計画(土地利用規制)に基づく立地のコントロール、もうひとつは店舗が取り扱える品目、つまり「中身」のコントロールだ。
フライブルクでも、1970年代頃から、安くて広い土地を求めて商業施設が郊外に立地しはじめたが、このような郊外店は自動車利用者には便利な一方、中心市街地や市内各地域の中心エリアの魅力低下、自動車を持たない住民の生活利便性低下など、さまざまな問題を招いてきた。
そこで、市が1992年に策定したのが、商業機能の立地やその規模をコントロールする「マーケット・中心地コンセプト」だ。
郊外店の取扱品目を制限
「マーケット・中心地コンセプト」の役割のひとつが、立地地域による取扱品目の制限だ。日本における大店法時代の商業調整・大型店規制とは根本的に異なり、「中心地区」(中心市街地と市内各地区の中心部)を明確に定義した上で、それ以外のエリアでは食料品や日用品の取り扱いはできないものとしている。
例えば、郊外エリアには食品スーパーは立地できないが、ホームセンターや家具店、自動車販売店などは許容される、という具合だ。フライブルク市ではこのコンセプト策定にあわせ、必要に応じて都市計画の指定変更も行い、整合性を確保すると同時に実効性を高めた。
この「マーケット・中心地コンセプト」は硬直的なものではなく、時代の変化に応じて幾度かの修正が加えられており、現行のものは2010年に策定されている。
必要な施設を中心部に維持
このような構想・計画はフライブルク市以外でもドイツ国内で多数策定されているが、その策定主体は複数自治体でつくる広域連合や州であったりと、地域によって事情が異なる。いずれの場合にも共通するのは、これらは単なる「構想」ではなく、具体的な政策方針であり、それに沿って実際の規制・誘導が行われているということだ。
すでに営業している店舗に対しては効力がないが、新たな店舗の出現によるさらなる郊外化の進展を抑制するとともに、必要な商業施設を中心地域内に維持し、「買い物不便地域」の発生を防ぐ効果もある。
商業施設の立地は都市計画だけではコントロールしきれないことから、明確な方針に基づき、商業機能の立地地域を適切に規制・誘導していくことが必要だ。
遠藤俊太郎/カッセル大学(ドイツ)
フライブルクの中心地区と郊外地区における取扱可能品目
中心地区でのみ取扱可能
食料品、飲料、衣料品、靴、文房具・学用品、新聞、書籍、切手、電化製品(冷蔵庫・洗濯機など除く)、ミシン・裁縫用品、カメラ・写真用品、時計・貴金属、工芸・美術品、スポーツ用品、玩具 ほか
郊外地区でも取扱可能
家具、大型家電(冷蔵庫・洗濯機など)、オーブン、システムキッチン、じゅうたん、自動車、バイク、自転車、工具・器具、建材、植栽、土壌、泥炭 ほか
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