「下町育ちの再建王」の経営指南 業務行動と役割行動を考える

数学が大好きな私はさまざまな事象を因数分解します。『仕事』を因数分解してみると、「業務」と「役割」の二つに分かれます。同じ仕事ですが、この二つは大きく意味が違います。そのことを意識すると、社員の仕事ぶりが急にハッキリと見えてきます。

組織における「業務」とは、また「役割」とはどういったことをいうのでしょうか。業務的なノルマを達成するのは仕事でやるべきことといえます。しかし、社内での「役割」は違います。営業職ならば、成績を上げ、稼ぐことが「業務」。部下を育てたり悩みを聞いてあげたりして、仕事に邁進させるのは「役割」です。

役割行動は立場によっても違ってきます。入社早々で業務成績を上げられない時代には、若者の元気さで社内を明るくするというのも気遣いの一つとして「役割」といえるでしょう。ストレスがたまっている仲間と一杯飲みに行くことは同僚としての役割行動であり、部下のモチベーションを上げるために、頃合いを見計らって声を掛けるのは上司としての役割行動です。

業務行動は会社、リーダーから与えられたことであり、得意・不得意にかかわらずやらないといけないことをいいます。他方、役割行動はその人の得意なところ、好きなところで自主的に周囲の人の役に立つことといえるでしょう。

「業務」と「役割」は夫婦関係で考えるとわかりやすいかもしれません。「僕が君を幸せにしてみせる」と言って結婚したご主人が、働いて滞りなく給料を奥さまに渡すのは、夫としての「業務」を立派に果たしているということです。しかしそれだけでは奥さまを幸せにしているかどうかはわかりません。奥さまが幸せを感じる毎日を送れるように、いとおしむことがご主人の「役割」だからです。

「業務」は完遂しないと組織の一員としての資格を無くす場合がありますが、「役割」はそれができなかったとしても、組織から追放されるというものではありません。例えば、毎日顔を合わせていながら部下の悩みに気が付かず、失ってはいけない人材に退職されてしまうというのは上司の役割行動ができていなかったことになります。また、部下を上手に育てることができない上司も同様です。しかし一般的にそのことで罰則を与えられるわけではありません。ただ、「上司として優秀でない」ということはいえるでしょう。

職責は業務行動だけでなく役割行動も含めて決めないと、組織は上手く回りません。特に上席になればなるほど、リーダーシップという役割行動が重要な仕事となってきます。社員一人ひとりの日頃の役割行動を、よくご覧になってみてください。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

お問い合せ先

社名:株式会社 風土

TEL:03-5423-2323

担当:髙橋

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