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「下町育ちの再建王」の経営指南 自己犠牲感を自己肯定感に変える

今回はちょっと哲学的な話、自己肯定感と自己犠牲感について考えましょう。 骨を折って人のためや会社のために何かをしたとき、それに対する評価や相手の態度によって、人は自己犠牲感、「自分を犠牲にしてこれほどやってやったのに……」という恩着せがましい感情にさいなまれることがあります。そうなると、「俺のやったことが何の役に立つのか」とか、「こんな苦労しているのに誰もそれを理解してくれない」といった不幸な思いにも包まれてしまうのです。

一方、同じことをしても評価や見返りを気にしなければ、「私はこれが好きだから……」とか、「やるべきだから……」と納得し、自己肯定感で満たされます。判断の物差しが自分の中にある人は自分を認めつつ、他人に愛情を持って接することができるものです。

どちらの感情も、実際のところ本人には認識されず、表に出ないことが多いかもしれません。しかし両者の精神状態には大きな違いがあります。自己犠牲感は、会社や他人への不満として心に蓄積され、他人を恨んだり、自分を否定する不幸な感情を生み出します。自己肯定感を持って仕事に臨むのと、自己犠牲感を抱きつつ仕事をするのでは、周囲への影響ばかりか、仕事の結果が大きく変わってきます。

特定の社員の心の中をイメージしてみてください。自己肯定感と自己犠牲感のどちらが強いでしょうか。人は皆、育った環境によって精神構造が大きく異なります。思考の習慣は本人の責任と考えないことです。できるだけ自己肯定感の強い社員を社内で育てたいものです。自己肯定感の強いスタッフが多くなると、自主的な行動が増えて社内が明るくなるとともに、お客さまへのサービスの質が高まってきます。

では、自己犠牲感の強い人にはどのように対応すればよいのでしょうか。まず、些細なことでも良いので、褒めてあげてください。褒めることがなければ、「顔色良いな」「面白いネクタイしているな」でもいいのです。自分が気にかけられていると感じさせることがポイントです。その上で仕事の目的を説明することで、使命感やモチベーションを高めるのです。もし、大変な仕事を抱えていたら、今これをやることが君の成長のために必要であり、そのことがメリットを生むと伝えるとよいでしょう。「つべこべ言わずにやれ」では、自己犠牲感が高まるばかりです。やがて不満がクーデターや退職につながりかねません。 自分のやっていることへの理解を深めること。それが自己犠牲感を自己肯定感に変える唯一の方法なのです。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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