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日本企業進出に期待高まる

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訪インドネシア・フィリピン経済ミッション

日本商工会議所は、東京商工会議所と合同で、2月1日から7日まで、三村明夫会頭を団長にした大型経済ミッションをインドネシアとフィリピンに派遣した。

今回のミッションでは、インドネシア・フィリピン両国の大統領をはじめとした閣僚との対話を通じて、両国政府、経済界などから日本企業の投資に対する強い要請とともに、日本企業が進出するための環境整備への意欲を表明。今後の円滑な企業進出への期待が高まる。

また、今回のミッションに合わせて派遣した、中小企業経営者、実務担当者を対象にした実務型ミッションである「現地事情視察会」では、現地工業団地やすでに進出している日系企業などを訪問。実際の経営環境を体感し、今後の具体的なビジネス拡大に向けた手応えをつかんだ。

三村会頭を団長とする訪インドネシア・フィリピン経済ミッションには、岡谷篤一副会頭=副団長(名古屋・会頭)、福田勝之副会頭(新潟・会頭)、宮村眞平特別顧問(東京・副会頭)、石井卓爾特別顧問(東京・副会頭)、小林健特別顧問(東京・副会頭)、佐々木隆特別顧問(東京・副会頭)、釡和明特別顧問(東京・副会頭)、朝田照男特別顧問(東京・特別顧問)、中村利雄専務理事=事務総長ら79人が参加。同時に派遣した実務型ミッションには30人が参加しており、総勢109人の大型ミッションとなっている。

最初の訪問国であるインドネシアでは、2月、2、3の両日、ジョコ・ウィドド大統領、ユスフ・カッラ副大統領、ラフマット・ゴーベル商業大臣、アンドリノフ・チャニアゴ国家開発企画大臣、サレ・フシン工業大臣、イグナシウス・ジョナン運輸大臣、ヒマワン・ハリヨガ投資調整庁副長官らと会談。「日インドネシア経済ダイアログ」、在インドネシア日本関係者との懇談も実施した。

3日には、レー・ルオン・ミンASEAN事務総長との懇談も実施。今年末に予定されているAEC発足に向けた進展状況と展望などについて意見交換を行っている。

ミッション一行は、4日にフィリピン・マニラを訪問。ベニグノ・アキノ3世大統領と会談したほか、「日比経済ダイアログ」の開催、在フィリピン日本関係者との懇談・ファースト・フィリピン工業団地(FPIP)訪問などを行っている。

特集では、今回の大型ミッションと実務型ミッションの活動の概要と成果などを紹介する。

フィリピン

電力改革が進展 アキノ大統領と会談

対日関係を重視

5日には、フィリピン・マニラのマラカニアン宮殿で、ベニグノ・アキノ3世大統領ら政府首脳と懇談。アキノ大統領は、「日本側からの質問、提案を伺いたい」と述べ、団員からの意見・要望に耳を傾けた。

三村会頭は、「フィリピンの製造業が国際競争力を持つためには港湾、空港、道路、電力など基本的なインフラを整備し、電力単価や輸送コストを下げることが必要である」と強調。「インフラ整備のためにはPPP(官民連携)など、民間資本の活用が効果的」と述べ、「民間企業が取れないリスクは政府が負うことが重要である」と提案した。

アキノ大統領は、日本が早期の制定を求めているフィリピンの自動車産業政策のほか、発電・送電・配電を分離した電力改革を進めていること、スービック港などマニラ港以外の港湾整備を進めていることなどを説明。「日本との関係を大事にしたい。日本にはフィリピンが困ったときにはいつも助けてもらった。お返しをしたい」と述べた。

経済ダイアログ 労働・人材育成など議論

同じく5日に市内のホテルで開催した「経済ダイアログ」では、フィリピン商工会議所(PCCI)のアルフレッド・ヤオ会頭、比日経済委員会(PHILJEC)のエディー・ホセ委員長ら民間経済界代表、政府高官らと懇談し、「産業発展のためのインフラ整備」「日比両国企業の協力」「投資環境」「財政改革」「金融政策」「経済区(PEZA)への投資」などについて意見交換。日本側からは現地のフィリピン日本人商工会議所の役員含めて約90人、フィリピン側は経済界・政府関係者約110人が参加した。

フィリピンの金融政策について、中央銀行のラヴァロ総裁補佐は、「フィリピンの商業銀行はここ16カ月で1650億ペソ資金量を増加させた」と説明し、「ASEAN経済統合に向けて国内銀行も改革を進める」ことを強調。PEZAのリリア・デ・リマ長官は、経済区への投資インセンティブについて説明し、「フィリピンでは、高い英語力とIT技能を持つ従業員が容易に採用できる」と投資の利点をアピールした。

インドネシア

インフラ整備に課題 ジョコ大統領と会談

トップダウンで解決

2日に首都ジャカルタの大統領府にジョコ・ウィドド大統領を表敬訪問したミッション一行は、約1時間にわたり、意見交換。昨年10月に就任したジョコ大統領にとっては、海外の民間経済団体との会談は初めての機会となった。

三村会頭からは、日本企業が今後、インドネシア経済にどのように貢献していくかを把握するために訪問したと趣旨を説明。「インドネシアは中産階級が増えており、また、ASEANの経済統合が進む中、サプライ・チェーンにおける生産基地として大変有望である」と発言し、日系企業が技術面だけでなく人材育成の分野でも協力ができると表明した。

ジョコ大統領からは「具体的な要望を聞かせてほしい」との発言があり、参加者からはインフラ整備、税制、土地収用、ファイナンス、法手続きなどのビジネス上の諸課題を提示。名古屋商工会議所の岡谷篤一会頭からは、同所会員企業の声として「機械のメンテナンスのために納品先へ渡航するためのビザ取得に時間が掛かるので、迅速に取れるようにしてほしい」との要望があった。

大統領はインフラ整備に意欲を示すとともに、「今後も問題があれば、直接言ってほしい」と述べ、トップダウンで課題解決に取り組む意向を示した。

経済ダイアログ 労働・人材育成など議論

ジャカルタ市内のホテルで実施した「日インドネシア経済ダイアログ」では、インドネシア商工会議所(KADIN)のスルヨ・バンバン・スリスト会頭ら経済界代表や政府高官と「インフラ整備における日インドネシア協力」「労働・人材育成」「インドネシアにおける経済開発」「インドネシアのマクロ政策」などについて意見交換。日本側からジャカルタジャパンクラブメンバーを含めて約100人、インドネシア側からKADIN、インドネシア経営者協会(APINDO)関係者約120人が参加した。

APINDOのララス副会長は、「国内の豊富な人口ボーナスが魅力であるが、その6割が低所得者層。教育水準の向上が課題である」と指摘。KADINのスリスト会頭は、両国中小企業の協力関係の構築について意欲を示した。

日商の三村会頭は、現地の記者会見で、「日本の強みは大企業と中小企業の連携」と述べ、インドネシアの中小企業への支援に協力する考えを示した。

ミンASEAN事務総長との会談 AEC発足に期待

3日に、ASEAN事務局本部を訪問したミッション一行は、レー・ルオン・ミンASEAN事務総長と懇談。ミン事務総長は、日ASEAN包括的経済連携協定について触れるとともに、日本との関係について「より緊密な経済協力へ向けて取り組んでいる」とAEC(ASEAN経済共同体)発足に向けた現状を説明した。

懇談の席上、新潟商工会議所の福田勝之会頭は、ASEANがより広域な地域経済統合の要に位置することを指摘し、「ASEANには今後のRCEPなど広域的なルールづくりのために、高い目標を持って、経済共同体の実現に取り組んでもらいたい」と要請。同席したASEAN統合モニタリングオフィスディレクターのメラニー・ミロ氏は「AECが実現する2015年以降のビジョンを描くことが重要」と発言。「11月の首脳会議で具体的なアクションプランにしていく」考えを示した。

実務型ミッションに30人参加

ビジネス拡大に前進

日商・東商は訪インドネシア・フィリピンミッションの派遣に合わせて、現地日系企業や工業団地などを視察する実務型ミッションを派遣。両国への投資などを検討している中小企業経営者ら30人が参加した。現地では進出企業の話に熱心に耳を傾けるとともに、活発に意見交換。今後のビジネス拡大が期待される。

フィリピン

優秀な労働力が魅力

フィリピンでは、5日の経済ダイアログ参加後に、現地の監査法人、インターネットモール事業などを手掛ける企業などから話を聞くとともに、6日にはマニラ中心部から南に約50㎞のファースト・フィリピン工業団地を訪問。総開発面積450haの広大な敷地に、約90社の進出企業のうち、多くの日系企業が入居している同団地の状況、金型製造業などを見て回った。そのほか、マニラ市郊外の中小企業なども視察。現地の典型的な中小企業の経営環境に触れた。

進出日系企業などからは、会社設立手続き、投資優遇制度、会計基準、税務調査、英語を話せる優秀な労働力、安定している賃金上昇率、離職率の低さなど、現地のビジネス事情の話を聞いた。また、化粧箱などのパッケージ印刷を手掛ける現地の中小企業では、品質管理の状況なども確認。現地で350人の従業員を抱える日系のサービス企業の責任者は、「フィリピンの労働力人口は豊富でホスピタリティが素晴らしい。しかも親日的」と述べ、「将来的には日本で役に立つ人材を輩出したい」との考えを示した。

インドネシア

高まる国内需要

2日の経済ダイアログに参加した実務型ミッション一行は、首都ジャカルタ中心部のショッピングモール「グランドインドネシア」を視察したほか、3、4日の両日は、ジャカルタ近郊の工業団地などに進出している二輪・四輪車の部品メーカー、合成樹脂メーカー、建設機械・産業機械部品メーカー、情報通信業の現地工場などを訪問。工場責任者らからは、生産体制や原材料・部材の調達、現地人材育成、従業員とのコミュニケーション、労務管理、人件費、電力事情、インフラ整備、税務調査、IT環境などの現地の諸事情について、説明を受けた。

自動車部品メーカーでは、インドネシア国内の需要拡大により、今後も生産拡大が見込まれるなどのメリットについて言及する一方、インフラ整備などの課題についても指摘。合成樹脂メーカーからは、物価上昇と人件費の高騰問題について「今後も続くだろう」との見方が示された。

建設機械・産業機械部品メーカーからは、技術指導など人材育成に力を入れていることなどを説明。情報通信業では、ハードウェアの高速化と低価格化が進むIT環境などについて理解を深めた。