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こうしてヒット商品は生まれた! 茶米のカヤジャム

原材料の配合比率によってさまざまな風味に仕上がるというカヤジャム。「茶米のカヤジャム」は、天然のパンダンリーフをふんだんに使っており、甘い香りと豊かな味わいが楽しめる。1個729円(税別)

アジアンスイーツをメーンに提供・販売している大阪・八尾の茶米古道(ちゃみこどう)。同店が日本製で初の商品化にこぎつけた、ココナッツミルクが主原料のカヤジャムがブームとなり、一時は1カ月半の予約待ちとなるほど好調な売れ行きを続けている。世界中の食が味わえる現在の日本に、ありそうでなかった商品が生まれたいきさつとは。

アジアの味を日本にも紹介したい

「茶米古道」の名前の由来は、アジアの基本調味料である「茶米油塩醤酢糖(ちゃみゆえんしょうすとう)」と、交易路という意味の「茶馬古道(ちゃばこどう)」をもじったものだという。「国や地域の食文化にも通じる味の基本を大切にしながら、アジアとの交易路のような役割を果たしたい」との思いを込め、主に東南アジアの珍しい自然素材を使用したスイーツを提供・販売している。

そんな同店が平成26年に商品化したのが「茶米のカヤジャム」だ。ココナッツミルクや〝アジアのバニラ〟と呼ばれるパンダンリーフなどを使ったジャムで、シンガポールやマレーシア、タイなどでよく食べられている食品だ。

「私は学生のころから暇を見つけては海外に行って、何か新しいものを見つけるのが大好きでした。卒業後はトヨタ自動車の海外現地法人に就職し、8年ほど東南アジアに暮らしました。その中、日本にはないのにどこか懐かしさを感じる食べ物がたくさんあることを知り、日本にも紹介したいと思うようになったのです」と茶米古道代表の竹本清香(さやか)さんは語る。

その後日本に戻った竹本さんは、21年に出身地である大阪府八尾市でカフェをオープンする。店の看板メニューは、マレーシアのペナン島で生まれたココナッツタルトや、たっぷりのバターとカヤジャムをはさんだカヤトースト。東南アジアに住んでいたころに知った味をもとに、自分で納得のいく味になるように書きあげたレシピでつくった自家製カヤジャムは、たちまち客の舌を捉え、「どこに行ったら買えるのか」「この店のジャムを分けてほしい」と言われるようになった。

「カヤジャムは、東南アジア諸国ではどこにでも売っているし、一般家庭でもつくられているポピュラーな食べ物です。ただ、日本では土産物や輸入専門店くらいでしか手に入れる方法がなかったので、それなら私がつくって商品化しようと思い立ったんです」

製造を引き受けてくれる工場がない

竹本さんのカヤジャムは、保存料、乳化剤、漂白剤が無添加のココナッツミルクと、市販品のエッセンスではない、天然のパンダンリーフを使用している。そこに卵黄、砂糖、塩を入れて、ココナッツミルクのオイルとエキスが分離しないように低温でじっくりと煮詰めれば出来上がりだ。

レシピはすでに完成していたにもかかわらず、難航したのが加工工場探しだった。ココナッツミルクに含まれる脂質や卵を使ったジャムは扱ったことがないという理由で、行く先々で断られ続けた。結局、菓子メーカーに勤める友人の紹介で、ようやく市内にある工場が引き受けてくれて、開店から5年を経た26年7月にカフェとネットショップでの販売にこぎつけた。特に宣伝などしなかったが購入者の口コミなどから徐々に売り上げを伸ばし、27年3月には1カ月に2500個を販売。一時は予約だけで1~1カ月半待ちの人気商品となる。ところが、好調な売れ行きの陰で大きな問題が持ち上がっていた。

「一つの釜で1回につくれる量は1000個ほどですが、材料がデリケートで手間も掛かるので、加工工場から『これ以上はつくれない』とたびたび言われていたんです。それではニーズに追い付かないので、新たな工場探しをせざるを得ませんでした。とはいえ、以前アプローチしたところには持ちかけられないので、遠方にある工場にも足を延ばして頼んで回りました」と振り返る。

その結果、愛知県内の工場が引き受けてくれることとなる。工場の常務はここ数年のココナッツオイルブームから、ココナッツミルクを主原料とすることに興味を持っており、そんなタイミングで竹本さんからの問い合わせを受け、話がまとまった。新たな工場を確保したことで、安定生産が実現し、ニーズに応えられる体制が整った。

食を通じて子どもたちに世界を見せたい

同商品のセールスポイントは、日本では滅多(めった)に手に入らない味が手軽に楽しめることと、子どもでも安心して食べられることだ。そうした食にこだわりを持つ人に長く食べてもらおうと、味と品質重視のスーパーや小売店にルートを持つ卸会社に積極的に営業をかけたことで、現在では東京近郊から九州まで広範囲で扱われるようになった。売れ行きは月1000~1500個と一時期よりは落ち着いたが、一度食べるとクセになるクリーミーな味わいに、購入者の8割がリピーターになっているという。

さらに、ココナッツをアレンジしたクッキーやドリンク、パンダンリーフの香りを利かせたシフォンケーキなど、アジアンテイストなスイーツを次々と生み出し、人気を博している同店。竹本さんの次なる展望はどのようなものだろうか。

「私には子どもが3人いるんですが、自分がそうだったように、日本だけでなく世界を見て育ってほしいと思っています。茶米古道として、そんな次代を担う多くの子どもたちのために、食を通じて世界に興味を抱いてもらうような社会貢献活動ができないものかと模索中です。とはいえ、一人でできることは限られています。同じような考えを持った人と出会い、そうした中から一緒に活動してくれるパートナーを探して、商品開発、お店の運営、そして社会貢献活動をもっと精力的にこなしていきたいですね」と意欲を燃やす。

〝好き〟を仕事につなげる発想力とバイタリティー。次はどんなアイデアが飛び出すのか楽しみだ。

会社データ

社名:茶米古道

住所:大阪府八尾市山本町1-5-3

電話:072-926-9938

代表者:竹本清香 代表

設立:平成21年

従業員:2人

※月刊石垣2016年3月号に掲載された記事です。

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