長野県千曲市に本社がある「株式会社フラットヘッド」という企業の話をしたいと思います。お世辞にも便利とは言えない立地にありながら、スゴイ仕事をしています。「ザ・フラットヘッド」はジーンズが有名なアメカジのブランドですが、他にも「R・J・B」「ハードバード」など複数のブランドを有し、衣料品や服飾雑貨などの企画・販売を行っています。メイド・イン・ジャパンにこだわった商品は、世界十数カ国に輸出されています。ほかにレストランを2店舗、全国展開を視野に入れたフローズンヨーグルトのブランドを経営するなど、さまざまな事業を展開するとてもユニークな会社です。
社長の小林昌良氏は1950年代のアメリカに魅了されており、商品のコンセプトにも影響しているのではないでしょうか。ここを代表するジーンズは50年代のアメリカンカルチャーを基とし、各年代のヴィンテージジーンズの良さ(40年代以前の染色・50年代の縫製・60年代の色落ち)を併せ持ち、かつ日本人の体型を考慮しつくられており「今と過去の融合」がテーマになっています。過去の良い部分を手本としつつ、生地の織り方や染め方のみならず、縫うための糸のより方や色合いまで当時を超える技術で再現しています。驚かされるのはミシンまで当時の物を海外から収集して活用していることです。それにしても、なぜミシンまで買い揃えたのかを尋ねると、「昔のミシンは縫うときに生地によれが生まれます。その自然なよれ方などもマニアにはたまらなく魅力的なのです」とのことでした。
すべてにおいてこのようなこだわりよう、しかも縫製が上手で丁寧なので、この会社の商品はどれも高品質でそして高価です。これらの中には3年待たないと手にはいらない品もあるというのですから、驚きです。
私は震災復興ボランティアとして10社ほどのコンサルタントを無料で行っています。その中に岩手県一関市の「京屋」という染物屋があります。そのオーナーさんを以前「フラットヘッド」にお連れしたところ、かなり衝撃を受けたようでした。彼いわく、「ここのデニムの染色技術は昔ながらのやり方で、手を抜いた箇所が全くない」とのこと。そして、真剣な面持ちでこう言いました。「私は今まで商業用という意識から、手抜きをしていたのかもしれません。これからは、自分が誇れる仕事をしたい」。早速、納得のいく染色の準備を始めるとのことでした。
「フラットヘッド」、ここの商品は、決して万人向きではありません。しかし、こだわりに納得したお客さまにとっては垂涎の的です。「本物になら、お金を出すことをいとわない」という、現在の消費動向にマッチした、実に素晴らしい経営内容だと思います。
お問い合せ先
社名:株式会社 風土
TEL:03-5423-2323
担当:髙橋
最新号を紙面で読める!