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アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 小売りイノベーション 進む中国

盒马鮮生の店舗のピッキング対応の内装の様子。バックヤードに自動搬送するレールがうかがえる 写真提供:茅島秀夫氏

中国のビジネス現場の変化速度はますます加速している。なかでも小売り業の進化はすさまじい。EC(電子商取引)で、米アマゾンとともに世界のトップを走るアリババは昨年、食品スーパー「盒马鮮生(フゥーマーシエンション)」を上海に出店、一気に上海市内に10店、北京などほかの都市にも進出し始めた。売りはネットで注文を受けた商品を「30分以内に指定場所に届ける」というものだ。といってもリアル店舗であり、顧客が買い物する店舗内をピッキングするスタッフが歩き回る構造。来店客もネット注文も決済はすべて支付宝(アリペイ)で決済する。

日本の大手小売りチェーンもネットスーパーを展開しており、高齢者の多い仙台など地方都市では大成功している。その多くはリアル店舗でピッキングし、箱詰めにして届ける方式だが、二つ違う点がある。第一に、「盒马鮮生」は最初から店舗がピッキング対応の設計で、スタッフが専用バッグに顧客の注文の品を入れ終わると、天井を走るレールに引っかけてバックヤードに自動搬送される。効率とスピードで日本を圧倒している。第二に、日本は配送トラックの巡回のため最短でも2時間、遅ければ半日後になるが、「盒马鮮生」は看板の30分から遅れることは多いものの平均1時間程度。デリバリーピザのようなバイクによる個別配送方式を取っているからだ。

さらに日本でも話題になった無人コンビニも急増している。ベンチャーの「Bingo Box」が展開している24時間営業の小型店舗では、入店客のスマホで個人を認識し、RFIDタグですべての商品を把握。客は自動レジを通し専用アプリや支付宝、微信支付(ウイチャットペイ)で決済する。決済せず店外に出ようとすると警告音が出る。アリババも同様の無人コンビニ「淘宝会員店(TAOCAFE)」の出店を始めている。

1960~70年代、成長期の日本の流通業の経営者がアメリカに頻繁に視察に出かけ、チェーン・オペレーションなど流通革命を日本に持ち込んだ。日本はその後、総合スーパー(GMS)やコンビニを日本式で進化させ、世界の先端を走っていたが、小売業のデジタル化のなかで、今度は中国が世界の先端に立つ時代になりつつある。中国の小売業は20世紀半ばのような後進性と21世紀の最先端が共存しつつ劇的に進化している。進化した店舗には日本企業の商品が適合しており、その意味でも日本企業は中国の流通革命に注目しなければならない。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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