アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 デジタル競争力で日本が巻き返すには

出典:IMD「世界デジタル競争力ランキング2017年版」

今、世界で起きている変化、とりわけビジネスを変えつつある大きな潮流は「デジタル化」である。IoT、人工知能(AI)、フィンテック、拡張現実(AR)からネット通販、スマホに組み込まれたアプリまで多種多様な商品、サービスが急成長し、さまざまな新ビジネス、新興企業を生み出している。この連載でも度々紹介しているように、中国、ASEANでは配車サービスや電子決済が劇的に普及したが、そうしたアジアの激変は日本ではあまり感じられないのが現実だ。日本のビジネス界、社会のデジタル化対応のスローぶりをはっきり示すデータを見つけた。

スイスの経営大学院、IMDが今年初めて発表した「世界デジタル競争力ランキング」だ。IMDは毎年、多面的な要素で国のグローバル競争力をランキングとして発表していることで有名だ。デジタル競争力もその流れにある新ランキングで、デジタル化に対する「知識」「技術」「将来に向けた備え」の3要素で点数を付け、総合評価した。世界のトップ5は①シンガポール、②スウェーデン、③米国、④フィンランド、⑤デンマーク―。主要国はカナダ9位、英国11位、豪州15位、ドイツ17位、フランス25位と続き、日本は27位と先進国では最後尾に近い。

日本は電子機器やロボット、ゲームなどで先進的だから、デジタル競争力は高いと思いがちだが、決してそうではない。ネット通販やスマホ決済の普及率は低く、学校でのIT教育も貧弱で、デジタル分野での起業も進んでいない。少子高齢化がデジタル化への社会全体での対応の遅れをもたらしていると言って間違いないだろう。

デジタル競争力のアジアに絞ったランキングを見るとショックはより大きくなる。日本の上にはシンガポール、香港、台湾、韓国、マレーシアがあり、日本のすぐ後には中国、カザフスタンが控える。来年には中国に逆転される可能性が高い。タイ、フィリピン、インドと日本の差も大差というほどではない。

日本がデジタル競争力で巻き返す唯一のチャンスは企業がアジアの激しいデジタル競争に飛び込み、アリババ、滴滴出行(ディーディーチューシン)、Grab、Mobike、支付宝(アリペイ)などと戦い、利用し、顧客を広げていくことだろう。日本国内にいて、デジタル競争力を磨くことはもはや難しい。

中小企業にとっても事情は同じだ。日本で人材不足で事業のデジタル化を進められないなら、東南アジアに出て、デジタル人材やパートナー企業を求めるしかない。まずはデジタル競争力で世界トップに立ったシンガポールで何が起きているのか、現地に足を運んでみるべきだろう。デジタル化が進んでもフットワークは大切だ。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門
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