日商 Assist Biz

更新

アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 地場のサービスが優勢 配車アプリ

ベトナム・ハノイの市内で目立つGrabのバイクタクシー

東南アジアでスマホアプリを使った配車サービスが急激に拡大している。先月号のこの連載でも、米国発祥のUber(ウーバー)の成功に触発され、中国市場で配車サービスの「滴滴出行(ディーディーチューシン)」が急成長し、中国の主要都市である種の交通インフラになっている状況をご紹介したが、“Uberチルドレン”とも呼ぶべきスタートアップ企業が今、東南アジアで頭角を現し始めている。

なかでも、マレーシア発のGrab(グラブ)とインドネシア発のGO-JEK(ゴージェク)が両雄。イメージカラーのグリーンもたまたま同じであることから、「GG戦争」とも呼ばれる、激しい競争を展開している。

バンコク市内ではこの数カ月で、「Grab」というステッカーを貼ったタクシーが目立つようになった。客はスマホアプリでGrabタクシーを呼ぶと、GPSの位置情報で近くにいる車が分かり、応諾したタクシードライバーから返答がスマホにあり、場所を決め、客と落ち合う。基本的な仕組みはUberと変わらないが、GrabもGO-JEKも個人ドライバー、日本的に言えば、白タクは使わない。

インドネシアで一時、GO-JEKとタクシー業界の対立が深刻化。ドライバーのデモなども起きたからだ。両社とも東南アジア特有のバイクタクシーの配車から参入したこともあって、自動車でのビジネスモデルは対立や各国政府の規制強化を避けようとしているようだ。Grabはすでに東南アジア諸国連合(ASEAN)の七カ国六十二都市で営業している。その勢いは明らかにUberを上回っており、中国市場でUberが敗退し、滴滴出行に中国法人を株式交換で売却したように、東南アジア市場でも、地場のサービスが優勢なのは興味深い。

タクシーや個人営業のバイクタクシーのドライバーのやる気を引き出し、アプリにも対応させるには、地場ならではの知恵がいるということだろう。スマホによる配車サービスや、先月本連載で紹介したレンタル自転車など、グローバルに広がる新ビジネスがアジア市場においては、アジア企業によるアジア的アレンジの方が成功しつつあるのは興味深い。そこでは、中国の支付宝(アリペイ)などQRコードを使った低コストの小口決済システムが欧米で確立されたクレジットカード決済を圧倒してビジネス基盤になっている点も、今後の日本企業のアジアでの勝ち残りの大きなヒントになるだろう。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

次の記事

後藤康浩

今、世界で起きている変化、とりわけビジネスを変えつつある大きな潮流は「デジタル化」である。IoT、人工知能(AI)、フィンテック、拡張現実(AR)からネット通販、スマホに…

前の記事

後藤康浩

自転車、自動車から宿泊施設までシェアリング・ビジネスがアジアのさまざまな都市で急拡大している。中国で米発祥の配車サービス、Uberを圧倒し、吸収した滴滴出行(ディーディ…

関連記事

後藤康浩

香港のことを考えると誰しも感傷的になる。香港は世界でも比肩するもののない特別なまちだからだ。旅行、出張、留学、就職、トランジットなど目的は違っていても、香港の空港(…

後藤康浩

アジアの新型コロナウイルス感染はピークを越えた。第二波、第三波の感染拡大のリスクはあるにせよ、平時に向かっているのは間違いない。だが、別の深刻な問題が日本企業に迫っ…

後藤康浩

中国には山査子(さんざし)を串に4~5個刺して、飴(あめ)で固めた「糖葫芦(タンフールー)」という素朴な駄菓子がある。冬の北京や中国・東北部の街中で見かける庶民の味。個人…