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アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 環境とインフラに商機

深刻な大気汚染

この2~3年、インドが中国を追い抜いたものがいくつか出てきた。「いいもの」は経済成長率で、2016年はインドが7・1%と中国の6・7%を上回り、17年もインドの方が高成長になるのがほぼ確実。

一方、「悪いもの」は大気汚染。世界保健機構(WHO)によると、ニューデリーのPM2・5の年間平均濃度は既に北京の1・4倍を超え、大都市としては世界最悪。その他インド北部の都市やムンバイでは非喫煙者でも1日数十本のたばこを吸ったレベルの危険物質を肺に吸い込むことになる。

中国が「反腐敗闘争」に続く、習近平政権の「反汚染闘争」による環境規制強化で、大気などが急速に改善に向かっているのに対し、インドは悪化の一途をたどっている。ニューデリーではPM2・5濃度が1立方メートルあたり1000マイクログラムを突破している。これは人間にとって安全とされる水準の40倍もの濃度だ。

問題は中国で大気汚染が深刻な状況に陥ったのは、1人当たりGDPが3000~4000ドルと途上国を脱しつつある段階からだったのに対し、インドはまだ1800ドルにも満たない途上国水準。にもかかわらず、汚染が先行して、ここまで悪化していることだ。今後、国民の生活水準が上昇し、インフラ整備も進めば、鉄鋼や非鉄金属、セメント、石油製品、石油化学製品などの需要は劇的に増加し、乗用車、トラック、航空機の輸送需要も増える。インドはむしろこれから環境負荷の高い産業が拡大する。インドの大気汚染はまだ序の口と言っていい。

対策は2つ。1つは排出源の工場に環境対応設備を導入すること。2つ目は公共交通機関や貨物鉄道を整備し、自動車やトラックの増加を抑制することだ。言うまでもなく、日本企業の出番となる。今、中国では環境対応のできていない工場の閉鎖、廃業が強制的に進められ、日本企業の現地工場でも環境対応に手を抜いていると閉鎖のターゲットにされるほど。逆に、日本の環境対応機器は販売が絶好調。それも中国国内生産の設備だけでなく、日本から輸入するフィルター、処理用化学品など消耗品や計測器が伸びている。

環境ビジネスは日本の金城湯池と長らく言われてきたが、思ったほどには成長できない時代が続いてきた。今、ようやく日本の環境関連ビジネスがインドを舞台に本格的な収穫期に入りつつある。中堅・中小企業にとっても、インド市場でアクセルを踏む時がやってきた。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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