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コラム石垣 2019年6月1日号 神田玲子

最近、『ファクトフルネス』という本が話題になっている。これはあまりなじみのない英語だが、著者によるとデータを基に世界を正しく読み解くことを意味するそうだ。われわれは、データから正確に事実を把握しているように見えても、人間が持つ本能によって都合のよい解釈をしがちだという。

▼例えば、「単純化本能」。とかく、人は一つの切り口でデータを見てしまう癖があるという。そういわれると、「フリーランス」と「会社員」を対象に、各自の仕事に対する満足度を聞いた調査の分析に思い当たる。フリーランスとは、個人自営業者や、オンラインのプラットフォームを利用し仕事を受託している人である。調査からは、フリーランスの方が、会社員よりも、仕事に満足している人の割合が高いという分析が出された。「自由な働き方である方が人々の満足度が高い」ことはうなずけるが、「フリーランスの方が望ましい働き方だ」という単純化した理解でよいのだろうか。フリーランスの中には、主たる世帯収入を得ている人もいれば、副業や一時的に仕事を請け負っている人もいる。また、低賃金で働いている人も一定の割合で存在し、そうした人は根本的な問題を抱えている。

▼近年、人々の職業、働き方、家族構成は多様化しており、それらは人々の意識や生活の目標にも反映される。人々の多様性を無視して主観的なデータを比較しても、実態とは乖離(かいり)した理解になってしまう可能性が高い。そして理解をゆがませるだけではなく、間違った政策の実施につながりかねない。データを独り善がりに解釈し、社会を理解したつもりになってはならないことを、われわれは肝に銘じなければならない。

(神田玲子・NIRA総合研究開発機構理事)

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