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テーマ別企業事例 女性起業家 成功への道筋

事例2 子どもにとって遊ぶことは学ぶこと よいおもちゃで子育てを楽しくする

オフィスハート(沖縄県浦添市)

沖縄県那覇市のすぐ隣にある浦添市で、オフィスハートは木のおもちゃにこだわった事業を展開している。「0-3歳によいおもちゃを 10歳までに遊ぶ力を」をモットーに、外国的な雰囲気の住宅街にある一軒家で、小さな子どもたちが木のおもちゃを使って自由に遊べるスペースの提供やおもちゃのレンタル&販売、オリジナル製品の開発などで注目されている。

オフィスハート内にある「木のおもちゃ広場」には大小さまざまな木のおもちゃがあり、子どもたちは自由に遊ぶことができる

玩具会社にいたから商品に対する考え方の違いに気付く

オフィスハートを創業し、代表取締役を務める土屋よしこさんは東京出身である。子どものころから好きだったおもちゃに関わる仕事をするため、大学卒業後は東京の大手玩具メーカーに就職し、主に商品開発に携わっていた。

「会社では、新しい商品を市場に出すためのマーケティングや利益率の算出など、いかに商品をつくっていかに売るかということをやっていました。好きな仕事だったので毎日が充実していました」と土屋さんは語る。しかし、結婚・出産を機に退職し、子育てを始めたとき、自分の子どもに与えたいおもちゃが、日本にはほとんどないことに気付いた。

「自分が働いていたから分かりますが、日本のおもちゃメーカーは利益を最重要視し、子どものことは二の次です。○○商戦のための新商品、テレビ番組との連動によるキャラクター商品などばかりで、子どもの成長に対するおもちゃの教育的な影響が全く考慮されていないんです」

土屋さんは退職前、ドイツの老舗ぬいぐるみメーカーとの取引を担当していた。そのときに痛感したのが、ヨーロッパと日本の、おもちゃに対する考え方の違いだったと言う。「長年使える木の製品が多く、ドイツのメーカーのぬいぐるみはすべて手作業でマイスターがつくっているものでした。ヨーロッパでは、子どものおもちゃには最良のものを、おもちゃは人生で最初に出会うアートだ、と考えられているんです」

そこで土屋さんは子育て中に、子どもによいおもちゃを調べ始めた。それを使うことでお母さんたちも子育てが楽しくなるのではと考え、周りのお母さんたちに自分の知っていることを伝え、情報交換を重ねていった。それが今につながってると土屋さんは言う。

子どもの数が多い沖縄で情報や体験の場を提供

子育てが一段落した土屋さんは、玩具メーカーに契約社員として復職した。復職後は消費者としての視点を強く感じるようになった。利益追求ばかりではなく、もっと消費者と心が通う仕事がしたいと思うようになり、企業内起業の形で、ぬいぐるみやおもちゃ、雑貨企画販売を行うオフィスハートを平成19年に設立した。その後、22年に夫の転勤により家族で沖縄に移住、オフィスハートもこれにより活動を停止した。

「ところが沖縄に友人ができ、東京から持ってきたドイツのぬいぐるみや木のおもちゃを見せたら、子どもに遊ばせたいからちょっと貸してくれない? となって。沖縄は子どもが多いのですが、おもちゃや遊びに関する情報や体験できる場所がないんです。それをなんとかしたいという思いからNPOを立ち上げ、県や公益財団法人の協力を得て、子どもがよいおもちゃと触れ合える場を提供する活動を始めました」

期間限定の活動だったが、継続を望むお母さんたちからの声が多く出た。そこでNPOの活動だけでは限界があったことから、25年にオフィスハートを再開して法人化し、木のおもちゃで遊べる一軒家「カーサ・マチルダ」を始めた。カーサはスペイン語で家、マチルダはママ、チルドレン、ダディを組み合わせた造語である。

「オープンの際には国の創業補助金、オープン後には地元の商工会議所にもお世話になりました。事業資金が足りなくて小規模事業者持続化補助金を申請した際、商工会議所の方に相談すると、申請に関してだけではなく、事業を客観的に見ていただき、いろいろアドバイスを受けることができました」

要望に応えていくうちに増えていった事業数と収入

「当初は子どもたちが自由に遊べる『木のおもちゃ広場』と、お母さんたち向けの部屋の時間貸しの2本でやるつもりでした。ところが、うちのおもちゃを買いたいという声が増えてきたので物販を、おもちゃのレンタルの要望が出たのでそれも始めてと、次々に事業の数が増えていきました。最初は収益的に厳しかったのですが、ホームページやSNSでも情報を発信し、口コミで広がっていくうちに、収益が安定化していきました」と土屋さんは言う。今では年間延べ約7000人の子どもがカーサ・マチルダで遊んでいるという。

現在の従業員は3人で、全員が働くお母さんだ。中小企業庁による「ママインターン制度(※)」を利用しての採用だという。

「この制度を利用して採用した従業員も、今ではなくてはならない存在になっています。うちのお客さまは小さな子ども連れの女性がほとんどで、母親としても先輩である女性スタッフがいた方が安心して来ることができますから」

こうした土屋さんの活動は、26年、全国商工会議所女性会連合会による「第14回女性起業家大賞」のグロース部門(創業5年以上10年未満)奨励賞として選ばれた。取材の最後、土屋さんに女性起業家としての有利な点、不利な点にはどのようなものがあると感じているのか聞いた。

「これは女性だからといってはいけないのかもしれませんが、私は数字にあまり強くなくて(笑)。事業をぐいぐい引っ張っていくタイプでもありません。ただ、うちはお母さん方が利用する場所なので、女性でないと分からない部分が多い。その点では女性経営者の方が有利だと感じています」

※育児などで一度退職した女性を中小企業がインターン生として受け入れると、その人件費の一部を負担してくれる制度

「第14回女性起業家大賞」/[グロース部門]奨励賞受賞

社名:株式会社 オフィスハート

所在地:沖縄県浦添市港川2-13-2 No.46

電話:098-988-0405

HP:http://officeheart.co.jp/

代表者:土屋よしこ 代表取締役

従業員:3人

※月刊石垣2017年4月号に掲載された記事です。

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