事例4 両地域の特色を込めた商品開発
はとや製菓(青森県青森市)
はとや製菓はリンゴ、カシス、大豆など青森県産の素材にこだわった土産用和洋菓子を製造・販売する青森市内有数の菓子メーカーだ。同社は、北海道新幹線開業を「新たな商機」とみて青函地域の特色ある商品を次々に開発、業績を伸ばしている。
協業して新商品を開発
はとや製菓は、平成27年6月、新幹線で訪れる観光客向けの商品第1弾として、パイの詰め合わせセット「青函パイ」を発売した。これは青森リンゴを蜜漬けしたものと、カスタードクリームとを、幾重にも折り重ねたパイ生地で包み焼き上げた主力商品の「ラブリーパイ」と、北海道産のクリームチーズとリンゴを使用して五稜郭を模した形に焼いた「星形パイ」の青・函コラボレーション商品である。続く第2弾は同年11月の「のっけ丼茶漬」。函館産のイカの塩辛とホタテ、サケ、シイタケをフリーズドライ製法で加工した高級感のあるお茶漬けで、どちらも考案者は社長の安保照子さんだ。
「以前、発売したフリーズドライの具材がたっぷり入っている『青森さんの野菜スープ』の評判が良かったんですよ。北海道新幹線も開業するし、お土産は軽くて日持ちすることが一番です。そこで、青・函関連商品として売り出す次の商品はお茶漬けと決めました。函館といえばイカだから、フリーズドライしたイカの塩辛を使うというアイデアがひらめきました。私は思いついたら、すぐに実行に移すタイプなのですが、当初は具体的な協業相手は決まっていませんでした」
そこで青函企業の事業連携や商圏拡大を目指す「パートナーシップ構築懇談会」(青森・函館両商工会議所主催)に参加し、プレゼンをした。すると、イカの塩辛を主力とする函館の誉食品が協業相手として手を挙げてくれたのだ。
「塩辛のゴロ(肝)はおいしいけれど、お茶漬けにすると匂いが気になる。塩分も多い。そこでゴロを抑えて塩分を4%から3%に減らしたところ、うまくいきました」
第3、4弾の商品も企画中だ。次はイカジャーキーを売りだすつもりだという。「実は、塩辛をフリーズドライにする方法を研究していた時の失敗作なんです。でも、みんなに食べてもらったら、後を引く味と食感だと好評だったので、味噌味に仕立てて珍味として売り出すつもりです。新幹線の中で飲むお酒のつまみにもぴったりですよ」
北海道からも人を呼ぶ
はとや製菓はフリーズドライ製法に長けた技術を持つが、あえて特許を申請していない。申請すると製法を公開することになるためだ。〝特許で守らなくても、うちの技術は他社には真似ができない〟。安保さんには、そんな自負があるのだろう。
「私が新商品を思いついたときは、みんなで具体的な内容を考えたり、工場長に試作品をつくってもらい何十回も味見して決めるんです。その方が柔軟な発想の商品が生まれるし、私たちの舌とお客さまが好む味が一致しているという自信がありますから。大変だけど楽しい作業です」
はとや製菓では2品の青・函関連商品が加わることで年間2000万円以上も売り上げが増えると試算している。第3、4弾を加えれば売り上げはさらに伸びるだろう。「新幹線効果への期待がある一方で、新青森駅は通過駅になってしまうという声もあります。でも私は悲観していません。それぞれの分野で精いっぱい努力をして、北海道からも人を呼べるようになれば青森はもっと盛り上がるはずです」
会社データ
社名:株式会社はとや製菓
住所:青森県青森市大字幸畑字谷脇69-1
電話:017-738-3500
代表者:安保照子 代表取締役社長
従業員:54人
※月刊石垣2016年2月号に掲載された記事です。
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