日商 Assist Biz

更新

テーマ別企業事例 北海道新幹線開通直前! 深化する「青・函」連携

事例2 駅前の〝顔〟となる新戦略が動き出す

中合 棒二森屋店(北海道函館市)

路面電車の走る駅前通りに面した棒二森屋本館とアネックス館(右奥)

地元函館では「棒二(ぼうに)さん」と呼ばれ親しまれている老舗百貨店・棒二森屋。地域商業のリーダー的存在として、まちの活性化に向けた活動を牽引(けんいん)してきた同店にとって、北海道新幹線開業は逃してはならない大きな好機だ。函館の玄関口に立つ立地と長年の信頼を生かし、新たな客を取り込むために進めてきた取り組みが、着々と実を結んでいる。

新たなニーズを予測して店内を大幅リニューアル

函館駅前は今、市街地活性化に向けた再開発が急ピッチで行われている。その中核に位置するのが、今年で駅前創立79年を迎える棒二森屋だ。地下1階地上7階の本館とアネックス館(新館)から成り、長い歴史とともに地域に根ざしてきた。そんな同店が近年力を注いできたのが、北海道新幹線開業を見据えた取り組みだ。同店店長の岩岡正剛さんはこう振り返る。

「およそ4年前に私が赴任してきたころの当店は、地元から親しまれているものの、地域の抱える現状やニーズの変化に対応しきれておらず、増加するインバウンドへの対応も遅れていました。新幹線が開業すれば、さらに多くのお客さまが見込めるだけに、まずは売り場を見直すことにしました」

そこで着手したのは、食品売り場の一新だ。本館地下1階に入っていたスーパーをデパ地下のような高級路線にリニューアルし、惣菜の品揃えを強化。特に少量パッケージを充実させ、量り売りも取り入れた。世帯人数の少ない買い物客、近隣のホテルに泊まる観光客やビジネス客のニーズに応えるためだ。直営店以外のテナントスペースには、函館名物「やきとり弁当」を提供するハセガワストア、料亭の寿々半、カフェのマルセンなどの市内人気店のほか、福岡を拠点に全国展開する肉処・壱丁田を新たに迎え、イートインコーナーも充実させた。

さらに免税品目拡大に合わせ、お酒売り場を大幅にパワーアップ。食器売り場にも和雑貨コーナーを新設するなど、一部に限られていた免税コーナーを各フロアに設け、インバウンドの売上拡大を図った。

青森とのコラボ商品が拡大

店舗のリニューアルと並行して行ったのは、東北圏との事業連携へのサポートだ。新幹線が開業すれば、東北圏との交流人口が大幅に増えると予想される。特に距離の縮まる青森県の主要都市(青森市・弘前市・八戸市)と函館市の人口を合わせると、100万人を超えるマーケットになることから、青函コラボ商品を開発したり、互いの企業が連携して販路拡大したりとウィンウィンの関係構築に尽力してきた。

「例えば、道南地域でとれた濃厚な牛乳を使って、青森の洋菓子店がチーズケーキやロールケーキをつくったり、函館の水産加工会社と青森の菓子メーカーが共同で茶漬けをつくったり……。そうして誕生した商品は、単に土産売り場で扱うだけでなく、催事などで折に触れてお披露目しています」

また、1年前からスタートした新幹線開業カウントダウンイベントにも積極的に参加し、期待感を盛り上げてきた。その成果は徐々に肌で感じられるようになってきたという。「開業1年前イベントでは、道南、東北、北関東の味覚を集めた物産展が函館駅前で開催され、なんと2日間で2・7万人もの人が訪れました。300日前イベントをはこだてグリーンプラザで、200日前は駅前大門商店街、100日前は赤レンガ倉庫の金森ホールで開催しましたが、回を追うごとに盛り上がってきているのを肌で感じます」

市内の主要エリアと連携して函館の魅力を発信

もう一つ、同店が着々と進めてきたのが、「アネックス館活性化計画」だ。同店の駅側に立つアネックス館を、誰もが気軽に立ち寄れて、おいしいスイーツやコーヒーを味わい、お土産を選んだりショッピングが楽しめる〝駅前のちょっと気が利く店〟にしようというものだ。その背景には、地域が抱える問題がある。

函館は国内有数の観光地だが、人口は平成23年から年間約2500人ペースで減っており、20~29歳の女性に限れば15%以上も減少している。一方、高齢者はこの5年間で10%以上増加。その結果、市場規模はこの10年で大幅に縮小しているのだ。また、郊外を走る産業道路沿いに出店が進んだため、駅前周辺の衰退も目立ってきている。北海道新幹線開業は再び駅前ににぎわいを取り戻すまたとない機会なのだ。

そこで同店では、駅前に今年9月オープン予定の16階建て複合施設「キラリス函館」と連携し、アネックス館における2つの役割を強化している。一つは、シニア層や子育てファミリー層に対し、日々の買い物だけでなく趣味の活動や発表の場としても貢献すること。二つ目は、函館を訪れる人に魅力ある商品や土産物を提供するとともに、観光や交通などのインフォメーション機能を充実することだ。岩岡さんはこれまでの取り組みを振り返り、「だいぶ形になってきた」と自信をのぞかせる。「この計画は当初、駅前商店街とともに進めてきましたが、さらに函館朝市や赤レンガ倉庫群のあるベイエリア、函館山ロープウェイ、五稜郭や湯の川温泉地区といった商業地域にも『一緒にやりましょう』と声を掛け、市全体に交流人口が流れる仕組みづくりに取り組んでいます。函館商工会議所の新幹線部隊や市役所の中心市街地活性化チームなどと密に連携してきました」

魅力的な観光都市として、また充実した商業都市へと変貌を遂げている函館。新幹線開業を機にその動きはさらに加速していく。

会社データ

社名:株式会社中合 棒二森屋店

住所:北海道函館市若松町17-12

電話:0138-26-1211

代表者:取締役店長 岩岡正剛

従業員:483人(派遣社員を含む)

※月刊石垣2016年2月号に掲載された記事です。

次の記事

テーマ別企業事例 震災から5年。本格復興への挑戦

福島商工会議所/大七酒造株式会社/仙台商工会議所/ファクトリーシリウス

2011年3月11日から早くも5年が経過した。多くの被災地では徐々に復旧が進んでいる一方で福島県は、原発事故の影響もあり、未だに厳しい状況に置か...

前の記事

テーマ別企業事例 〝地方創生〟で地域は変わるか?

霧島酒造株式会社/近江八幡商工会議所/SUSANOO事務局/株式会社花巻家守舎

政府の掲げる最重要政策の一つとして大きな期待を集めている「地方創生」。この実現に向けて、商工会議所や地域の中核企業が動き出している。少し...

関連記事

テーマ別企業事例 多彩な取り組みで地方創生を進める 「徳島県モデル」に迫る!

阿波池田商工会議所

2020年に初めて、東京からの転出者が転入者を超えた。働き方改革がある程度浸透したことに加え、昨年来のコロナ禍の影響で企業のテレワーク導入な...

テーマ別企業事例 地域の力を結集してコロナなんかで倒れない! 稼げる農商工連携で逆境を乗り切る

小野食品株式会社/株式会社森本研究所/株式会社ヤマミ醸造/株式会社マルヤナギ小倉屋

長引くコロナ禍の影響により、事業継続や雇用維持などの面で極めて厳しい経営環境に置かれている中小企業が増えている。今こそ、自社が培ってきた...

テーマ別企業事例 逆境に強くなる! 着眼点と技術力で業績を伸ばす

有限会社TGテクニカ/有限会社北陸ベンディング/富士高砂酒造株式会社/株式会社タテイシ広美社

コロナ禍という未曽有の逆境に必死に耐えている中小企業は多い。しかし、このピンチに対して耐えるだけではなく、チャンスに変えようと奮闘してい...