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テーマ別企業事例 北海道新幹線開通直前! 深化する「青・函」連携

事例3 青森と函館が一体となる津軽海峡圏構想

青森県商工会議所連合会(青森県青森市)

昨年9月、新青森駅で開かれたカウントダウンボードの除幕式。三村申吾知事、鹿内博青森市長、若井敬一郎青森県商工会議所連合会会長、安藤健一JR北海道取締役函館支社長らが参加した

従来から青森市と函館市は、文化・スポーツ・観光・経済といった幅広い分野で積極的な交流を図っているが、今回の開業により津軽海峡経済圏の人の移動が一段と活発になることが予想されている。そこで青森県商工会議所連合会会長であり青森商工会議所会頭の若井敬一郎さんに、新幹線開通への期待と県連の取り組みについて聞いた。

新幹線とともに歩んだ14年

青森県にとって、新幹線の開業は3度目となる。平成14年12月の東北新幹線八戸駅開業、22年12月の同新幹線全通と新青森駅開業、そして今回の北海道新幹線部分開通と奥津軽いまべつ駅開業である。今回の〝新幹線開通〟について若井さんはこう話す。「この14年間は新幹線とともに歩んできた感があります。そのため北海道新幹線開通に対する取り組みは、これまでの活動の延長線上にあるものと思っています。今回は青森と函館などの道南地域がうまく連携できるかがポイントです」

若井さんの言葉通り、青森県側では、道南地域との連携を図る取り組みが多く行われている。そのうちの一つが青森県と道南の人口180万人を津軽海峡交流圏と位置づけ、国内外からの誘客強化と観光資源の魅力発信を行う「λ(ラムダ)プロジェクト」だ。「λ」は新函館北斗駅から新青森駅、八戸駅への新幹線のルートと、新青森駅から弘前駅への奥羽本線のルートの形を、ギリシャ文字のλに見立てることに由来する。青森県商工会議所連合会も、「λプロジェクトを推進するエンジン役」と位置付けられる津軽海峡圏ラムダ作戦会議にメンバーとして参加。大きな役割を担っている。

「青森県と道南地域は、地理的・歴史的・文化的に深いつながりのある地域です。函館とは約1万年前から、〝しょっぱい川〟を互いに渡って交流してきたという記録が残っているほど。経済界としても青函両域の産業・観光振興につながる取り組みを進めていかなければなりません」(若井さん)

また、今年7月には「青森県・函館デスティネーションキャンペーン(DC)」も開催される。若井さんは、推進委員会会長として、本番に向けた準備を着々と整えてきた。例えば、昨年7月15日には旅行商品の開発や送客、県観光情報の発信を要請する目的で全国から旅行エージェントやマスコミ関係者、JR関係者などを招待。県内各地の豊かな観光資源や青森・函館DC期間中のさまざまな取り組みを紹介する「全国宣伝販売促進会議」を開催した。この会議は大盛況で、全国から約1100人が参加している。このように、今回の新幹線開通は青森側でも津軽海峡圏域を元気にする千載一遇のチャンスと捉えられているのだ。

連携事例が続々と誕生

こうした機運は、もちろん青森市内だけで生まれているわけではない。県内各地でさまざまな取り組みが展開されつつある。若井さんは笑顔でこう話す。「弘前商工会議所のこんな事例があります。23年4月に函館商工会議所と『津軽海峡観光クラスター会議』を設立。他県にはない質の高い観光を創出することを目的に活動しています。イベント、商品でも連携が進み、品質は確実に上がっています」

この言葉通り、弘前で毎年10月に開催されている「津軽 食と産業まつり」には函館からの出店が多くみられるようになった。同様に、12月に開催される函館の「クリスマスファンタジー」では「弘前ナイト」が開催されるようになった。

こうした動きは、県内全域に広がりつつある。函館で始まった飲み歩き、食べ歩きを楽しむイベント「バル街」を弘前、青森でも開催、相互に出店して観光客を楽しませているほか、26年からは五所川原商工会議所の支援で「バル街」が五所川原市でも開かれた。さらに八戸商工会議所では「はこだてグルメサーカス2015」へ八戸らーめん会の会員店を出店させたり、外国人観光客の増加に対応して、勉強会を開催している。

新たなつながりから事業が生まれる

個別企業の連携も進んでいる。青森商工会議所では24年度から「青森・函館商工会議所会員事業所パートナーシップ支援事業」を開始した。

「平成元年のツインシティ締結から津軽海峡圏を取り巻く環境は大きく変化しました。そうした中で、今回の新幹線開業は最も大きな変化かもしれません。新幹線によって往来時間が大幅に短縮される。その効果によって人的交流の一層の活発化が期待できます」(若井さん)

この事業によって、両商工会議所会員約5500事業所のビジネス交流が拡大している。新たな事業提案や技術連携が始まり、コラボ商品も続々と誕生。圏域全体で盛り上げようという気運醸成にも一役買っている。

「新しい事業というのは、人とのつながり、顔合わせから生まれます。北海道新幹線の開通によって、青森と函館で新たなつながりがたくさん生まれる。これまで以上に多くの新事業が生まれるはずです」

往来時間が大幅に短縮される津軽海峡圏。青森・函館の一体的な発展に期待が高まっている。

DCでは海外客も呼び込みたい

県では青森市内の三内丸山遺跡など縄文遺跡群の世界遺産登録を目指している。実現すれば内外の観光客を誘致する強力な観光資源になる

今年の7月1日から9月30日まで開催されるデスティネーションキャンペーン(DC)のテーマも「津軽海峡でつながる物語」だ。この青森県函館DCで推進委員会会長を務める若井敬一郎会長は「陸海空を駆使したDCを実現したい」と構想を披露する。

「陸は新幹線を中心とする鉄道と高速道路、空は国内外を結ぶ航空路と国際空港、海は青森-函館間、下北半島の大間-函館間を結ぶフェリーです。これらを組み合わせることで多彩な旅行商品をつくることができます」

国内はもちろん、外国人観光客の誘致にも積極的だ。平成26年度に函館市内に宿泊した外国人は約35万人(来函観光入込客数推計)だった。その一方、青森は県全体で5万2000人(青森県観光入込客統計)である。これまでは簡単に行き来できなかったが、函館から青森まで新幹線で1時間(現在は約2時間かかる)で行き来できるようになれば、青森も外国人観光客の回遊ルートに組み込まれるはずだ。

青森空港には、本年より中国との定期便が運航を始めることも朗報だ。これで以前から就航している週3便のソウル便と合わせ中韓の観光客を誘致しやすくなった。

地理的な便利さだけでなく、文化的な面でも函館と青森は面白い組み合わせだと若井さんは指摘する。

「函館はここ100余年で急速に発展した新しさを感じられるまち、その一方で、青森は伝統のある地域です。例えば、弘前城をはじめ歴史に磨かれた名所が数多くあります。文化や芸能面でも違いがあって、両都市を訪れることで旅行はより充実したものになるでしょう。また道南と北東北の縄文遺跡群は世界遺産登録を目指しています。もしこれが実現すれば新幹線を使って遺跡を巡る魅力的なコンテンツになるはずです」と期待している。

※月刊石垣2016年2月号に掲載された記事です。

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