東京都のほぼ中心に位置する府中市は、大化の改新により武蔵国の国府が置かれ、早くから政治、経済、文化の中心地として栄えてきました。鎌倉時代には新田義貞と幕府軍の合戦の舞台となりましたが、江戸時代には甲州街道の宿場町として大いに栄えたため、今でも寺社旧跡などが多く残されています。毎年大國魂神社で行われる「くらやみ祭り」などのさまざまな伝統行事も継承されています。
当市は人口約25万人を擁し首都東京の近郊都市として、にぎわいのある洗練されたまちを目指しています。長い歴史や伝統の中に、当所主催の「商工まつり」や「府中マルシェ」などの商業イベントも取り入れてきました。
そのような当市で、昭和10年から営んできた鮮魚店「浜喜屋」は私で二代目です。まちの魚屋であった私が、府中市商店街連合会の会長を経て、当所の会頭に就任した理由の一つに「まちの再開発」があります。
府中駅周辺には、現在わが社が入っているショッピングモール「くるる」や、「三越伊勢丹府中店」「フォーリス」、昨年7月に府中駅前再開発完了の象徴としてオープンした複合施設「ル・シーニュ」といった大型商業施設が立ち並んでいます。府中駅前の再開発が完成した時代に立ち会えた喜びもありますが、商業施設は完成して終わりではありません。作り終えた時がまた出発点となり、いつまでもお客さまが来てくれる府中市の核として、その価値を永遠に保持していかなければならないのです。そこに私は、商工会議所の会頭としてのやりがいを感じています。
これまでの人生で影響を受けた人物に、ダイエーの創業者である中内㓛氏がいます。氏は、『毎日市場に行き、相場も質も変わる鮮魚をたった数分で己の目利きによって仕入れ、店に戻れば仕入れた商品に合わせて陳列も変える。そしてそれを毎日売り切る。町の魚屋は商売の原点である。』と話しておられました。まさに、わが社においても仕入れてきた商品が全てピタッと収まり、お客さまがゆっくり店内を一周し商品を見ることのできる陳列の仕掛けや、職人やスタッフが働きやすい環境など、細部にまでこだわった店づくりを行ってきたと自負しております。
会頭就任により店だけでなく「まち全体」のことを考えるようになりました。商業施設や各個店、さらには府中市全体が未来に向けて意志をつないでいけるよう今後も尽力してまいりたいと思います。
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