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テーマ別企業事例 少ない商品、狭い領域でも業績を伸ばし続ける 「一点集中型」NO.1企業はココが違う

事例3 国内シェアNo.1の全自動鶏卵選別機〝卵〟に特化した世界一の技術力

ナベル(京都府京都市)

「これ、つくれたらもうかるぞ」。そう持ちかけられたのを機に、日本初の卵選別機を開発したのが昭和54年。以来、〝日本の卵業界の生産技術部門〟と称し、ナベルは養鶏の洗浄選別包装システムや、卵品質検査装置の開発を進めてきた。今や国内市場の70〜80%を占め、世界シェア第2位のポジションにある。卵に一点集中し、世界トップシェアを狙う大躍進に迫る。

技術と実績を集約した全自動鶏卵選別包装システム。卵の選別と包装を分離でき、省スペースで処理能力を3割アップ。多品種少量生産に対応する

日本初の〝国産〟が卵業界への活路を開く

スーパーに陳列される卵のパッケージ。それらに世界トップクラスの技術が生かされていると知ったら、見慣れた日常風景が新鮮に映るかもしれない。多種多様なパッケージのサイズ、色、ラベルに柔軟に対応し、卵の品質チェックも同時にこなす全自動鶏卵選別包装装置。そのトップメーカーが、京都市南区に拠点を置くナベルだ。

創業は昭和39年、町工場として家電製品の生産ラインの制御盤を製造していた。卵とは全く無縁だったものの、あるとき、オムロンに勤める友人から卵選別機製造の話を持ちかけられる。

「当時は輸入機器しかなく、国産初に成功したらもうかるぞと言うんです。無謀な話ですが、日本の製造業が元気な時代で、私も若かった。それで『やってみよか』と。先見の明やらカッコイイ話なんて、なんもありません」

そう当時を振り返って、ナベルの代表取締役、南部邦男さんは笑う。従業員は10人にも満たない工場で、大手家電メーカーの下請けをこなしつつ、夕方から深夜まで試作品づくりに励んだ。

「いつしか養鶏場や農協の人も一緒になって、『国産をつくるんや』と躍起になってました。卵もたくさん割りましたが、納品先もかまへん、かまへんと言ってくれて、『こうしたら良くなるで』と装置をいじりだす。もう誰がつくっているのか分からないくらい、和気あいあいと一丸となって、メード・イン・ジャパンを目指しました」

そして開発から約5年後の54年、ついに国産初の鶏卵全自動選別包装装置「AX-80」が誕生する。輸入品の導入費8000万円に対し、完成した装置は4000万円。59年には科学技術庁の注目発明賞に輝いた

特許侵害訴訟で知財戦略に目覚める

こうした成功体験の背景にある、養鶏に携わる人たちと一緒になったものづくり。これが、ナベルが卵業界に突き進む原点となった。そしてもう一つ、後のナベルを特徴づける大事件が、昭和61年に発生した。アメリカのメーカーから特許侵害訴訟を起こされたのだ。賠償額は6億円という当時の年商を上回る額を要求される。「目の前が真っ暗になった」というが、幸いにも周囲の弁護士、弁理士の計らいで4年争った末に10分の1以下の和解金を支払うことで事態は収まる。

この経験を通じて、南部さんは特許の重要性、知的財産が利益につながることを痛感する。

「実は私は文学部の出身で、シナリオライターを目指していたんです。シナリオを書くがごとく特許出願書をどんどん作成しました」

製品づくり、技術開発に励むと同時に、知的財産にも注力する。社内に特許検討会や発明報奨制度を設けるなど、特許を活用した知財戦略を全社挙げて取り組み、他社の追随を許さない体制を整えていった。実際、他社からの和解金は全社員に、ライセンス供給の利益の一部は発明者に還元するなど、実益の見える化で、社員の意欲を高めていく。ナベルが保有する特許出願済みは国内外合わせて496件、登録済みは128件になる。技術開発においても、製造技術者は現場から離れてはいけないと持論を説き、「お客さまの悩みを自分の悩みと感じられるまで関わる。そして、喜ばれることの喜びを知ることが、開発の原動力になるんです」と目を輝かせる。

一点集中のリスクを踏まえつつ道を極める

実際、主力製品である自動ひび卵検査装置も、そうして生まれた。ひび割れ卵のチェックは、目視検査が主流だったころ、大手メーカーをはじめ、こぞってカメラ技術向上を目指していた。

「真っ当なアプローチです。でも、鶏卵場に行くと口をそろえて『カメラじゃ見えへん』と言う。触ったり、音の違いで判断していた」

これをヒントに、16個の特殊ハンマーで卵全周を打診する音響分析技術搭載の自動ひび卵検査装置を世界で初めて完成させる。ナベル製品の評判は海外にも広がり、平成4年のマレーシアへの輸出を開始。14年には東南アジア市場の拠点としてマレーシアに現地法人を設立し、ウクライナ、上海、中国での展開も図る。

「私たちの技術向上は、卵を生で食べる日本の食文化があったからこそ。卵にも包装にも一番厳しいのは断トツで日本人です」

卵は宗教的タブーもなく、鳥インフルエンザなどの食害が世界同時に発生することも考えにくい。経済が発展する国は、動物性タンパク質の需要も伸びる傾向にあり、安価な卵のニーズは顕著で、同社の海外市場の伸びしろは大きい。

一方、卵の分野の技術を生かし、医薬分野にも広げている。インフルエンザワクチン製造で使用される孵(ふ)化鶏卵の胚(ひなの胎児)の生死判定装置を開発するなど、〝食卵〟以外の市場も視野に入れる。

「こだわったのは卵ではなく、お客さまに喜んでほしいという思いです。海外もそれは同じです。各国の文化や歴史、価値観を生かしつつ、世界ナンバーワンの日本企業として、期待に応えていくのみです」

卵に一点集中して約40年。見つめる先はどこまでも広く、深い。

会社データ

社名: 株式会社ナベル

所在地:京都府京都市南区西九条森本町86番地

電話:075-693-5301

HP:https://www.nabel.co.jp/

代表者:南部邦男 代表取締役

従業員 151人

※月刊石垣2016年10月号に掲載された記事です。

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