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テーマ別企業事例 少ない商品、狭い領域でも業績を伸ばし続ける 「一点集中型」NO.1企業はココが違う

事例4 カニカマ製造装置を起点に「金平糖経営」で新分野へ進出

ヤナギヤ(山口県宇部市)

今年創業100周年を迎えた食品加工機械メーカーのヤナギヤ。同社が開発した「カニカマ製造装置」は、カニカマを日本の食卓に普及させただけでなく、世界にも市場を開拓した。その技術力を生かして、伝統食品をはじめ、日用品や医薬品など異分野にも進出し、金平糖のごとき多角経営を進めている。

「これからの時代、何が起こるか分からない。本業を大事にしつつ、新しいものもつくって、壁に蔦(つた)がはうように地道に広げていきたい」と語る柳屋芳雄社長

顧客のニーズから誕生したカニカマ製造装置

昭和54年にカニカマ製造装置を開発したのが、食品加工機械メーカーのヤナギヤだ。同社は大正5年に柳屋蒲鉾(かまぼこ)店として創業し、水産練り製品を製造・販売していたが、昭和に入り、手仕事だった製造工程の機械化に乗り出す。その後、食品加工機械の製造に軸足を移し、次々と製品を生み出していった。二代目社長時代には食品の工業生産化の波に乗り、新工場を建設してさらなる生産力の向上を図ったが、徐々に経営が悪化していく。

「私が三代目として25歳で社長を継いだときは、いつつぶれてもおかしくない状態でした。社内の雰囲気は悪いし、会議を開いても社員の口から出てくるのは言い訳ばかり。それを打開しようと、『なぜ売れないかではなく、どうしたら売れるかを考えよう』と言い続けました。若手社員を登用し、自由に意見が言えるようにしたところ、徐々に社内の空気が変わって来て、売上が上向いてきたんです」と同社社長の柳屋芳雄さんは振り返る。

柳屋さん自身も客の元に足を運び、さまざまな意見や要望に耳を傾ける中、着目したのが当時日本の食卓に普及し始めていたカニカマだった。普通の蒲鉾と比べて製造工程が複雑なため、それらを全て機械化できたらと考えたのだ。数年に及ぶ研究を経てようやく完成にこぎつけると、順調な売れ行きを示す。これにより経営危機を脱し、「カニカマ製造装置のヤナギヤ」と呼ばれるほど、同社の代名詞的存在となっていった。

「平成を迎えたころ、カニカマの国内生産量は年間約5万tと安定していましたが、練り製品全体の生産量は年々減少していて、やがて半減する可能性もあると思いました。そこで目を向けたのが海外です。その当時、蒲鉾はヘルシーフードとして欧米を中心に注目されていたので、海外の展示会に出てカニカマの製造技術を大いにアピールしました」

その結果、世界の市場を次々と開拓していく。現在、カニカマは21カ国で生産され、そのうちの19カ国で同社の製造装置が使用されている。その生産機械のシェアは世界の約70%を占めるまでになった。

独自技術とブランド力を生かして多角化に乗り出す

海外進出と並行して同社が力を入れたのが、新たな分野への販路拡大だ。同社が培ってきた技術とブランド力を生かし、水産練り製品以外の製造機械にもテリトリーを広げた。一つずつ突起を増やしていく柳屋さんが説く「金平糖(コンペイトウ)経営」の実践である。

例えば、その一つが豆腐製造装置だ。柳屋さんが、とある展示会で製造装置を見て、『これならつくれそうだ』と思ったことがきっかけだった。豆腐づくりにおいては、豆乳の温度調整とにがりを投入するタイミングが一つの肝だが、機械なら常に一定の条件下で安定的に生産できると考えたのだ。海苔(のり)の自動伸ばし火入れ機をつくったのも同様の理由からだ。従来方式と新方式とでは味に違いがあるかを確かめるため、東京の大手海苔メーカーに判定を依頼したところ、「従来方式より新方式でつくった方がおいしい」と担当者をうならせ、そのメーカーへの納入が決まった。

「豆腐や海苔に目を付けたのは、カニカマで培った技術を応用すればつくれると思ったからですが、日本の伝統食品だったことも大きな理由です。伝統食品は手づくりの方がおいしいという固定観念がありますが、機械でつくっても大して味は変わらない。むしろ大量生産するなら、1個目と1万個目の品質が一定なのは、圧倒的に機械の方。手づくり神話に一石を投じたいというのもありました」

多角経営が実現できたのは〝絶対的エース〟のおかげ

その後も同社は拡大路線を進み、今では和菓子やドーナツ、冷凍うどんや卵焼き、ペットフード、トイレの洗浄剤、糖衣錠など、食品から日用品や薬品まで、幅広い分野で技術が活用されている。

「今ではジャンルにとらわれずいろいろつくっていますが、そのほとんどはお客さまのニーズが出発点です。地元の中小企業を訪ねると、困っていることがたくさんある。話を聞いているうちに、私の中に好奇心がむくむくと湧いてきて、既存の技術をベースに新たな機械をつくるという流れです。マーケティングの重要性が言われていますが、私はお客さまの相談に乗る方が早いんじゃないかと思う。社員にはいつも『困った .com』をつくれと言っていますよ」

もちろん、請け負った中にはあまり利益が出ないものもあったという。しかし、4年で4勝や3勝1敗を目指すより、2勝1敗1引き分けくらいでいいから、その分お客さまとの信頼関係を築く方が大事と柳屋さんは力説する。

「そんな経営が実践できるのも、元はといえばカニカマ製造装置という〝絶対的エース〟が、当社の名前と技術力を世に広めてくれたから。10年20年先は何をつくっているか分かりませんが、たとえ蒲鉾屋が1軒だけになってしまったとしても、そこの修理をするのは当社でありたいと思っています」

会社データ

社名:株式会社ヤナギヤ

所在地:山口県宇部市善和189-18

電話:0836-62-1661

HP:https://ube-yanagiya.co.jp/

代表者:柳屋芳雄 代表取締役社長

従業員:153人

※月刊石垣2016年10月号に掲載された記事です。

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