渋沢栄一翁の『論語と算盤』に、「商才は道徳を以て根底とするのであり、道徳の書たる論語によって養え、正しい道理の富でなければ永続しない。」とあります。経営は決断の連続であり、その積み重ねが会社の存続を左右するのですから、「君子喩於義、小人喩於利」「近者説、遠者来」のごとく、論語を判断基準にすれば慧眼を得ることとなります。
弊社は大正元(1912)年に大正組として創業、同4(1915)年に牧田組へと改名創立し、百年を超える歴史を刻めたのは、まさにお客さまのお役に立つという義があったからこそです。
一例として、総合建設業によくある営業、設計、工事といった部署はなく、お客さまごとに編成したプロジェクトチームが、お客さまの利便性向上に四六時中対応しています。加えて、その義を支える社員さんにも仕事を通じて説(よろこび)を感じてもらえるよう、人材育成会議を設け一人一人の成長を会社全体で支えています。
余談ですが、先代の他界により28歳で会社を継ぎ、暗中模索で事業を継続してきたことが、49歳の若輩に会頭の重責を担わせたのではないでしょうか。
弊社の位置する富山県射水市は、平成の大合併で旧新湊市と旧射水郡(3町1村)によりできました。これを機に商工会議所名を新湊から射水に変更しましたが、活動エリアは旧市に限定されるため、併存する商工会と協議会を組織し、当所会頭が会長となって、地域経済の発展に取り組んでいます。
旧新湊市は富山湾に面し、富山新港や新湊漁港を有する港町です。古くから北前船交易で栄えていました。とりわけ、江戸時代より伝わる「放生津曳山まつり」は映画『人生の約束』(2016年東宝)のモチーフにもなり、当時の栄華を今に伝えています。
当所では「新湊曳山(ほうじょうづひきやま)まつり市民プロジェクト事業」や「新湊歴史ヒストリア事業」において、これらの地域資源に対し光をあて地域振興を支援しています。
また、安岡正篤氏の尊孫にあたる論語の第一人者安岡定子先生にご縁をいただき、渋沢翁の教えを啓発するため、「いみず塾」を3年前から開講し論語を学んでいます。一朝一夕で効果が現れるものではありませんが、いつの日かこの取り組みが大輪の花を咲かせるものと確信しています。
ちなみに全国の商工会議所の中で、安岡先生の論語塾を定期開講しているのは射水だけです。
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