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テーマ別企業事例 “島おこし”に秘策あり!

日本の島々は、風光明媚(めいび)な自然と新鮮な食材に恵まれているが、高齢化や人口の流出などにより過疎が進んでいるという現実もある。そこで、島が持つ“資産”を活用して新たなにぎわいを創出しようと活動している2つの島の奮闘ぶりをリポートしたい。

事例1 島伝統の“そうめん”を復活 名産食材を組み合わせて客を呼ぶ

洲本商工会議所(兵庫県洲本市)

かつて皇室や朝廷に食べ物を献上する「御食国(みけつくに)」の役割を担っていたとされる淡路島。その豊かな「食」という強みを生かしたご当地メニューで観光客を呼び込もうと、地産地消を推進して、島の活性化に取り組んできた。島へ呼び込もうというプロジェクトのスタートから7年が過ぎた現在、島外への認知が広がり、関西圏内外から車で気軽に訪れる人が増えている。

いろいろな麺があるという意味で名付けられた、「淡路島ぬーどる」のキャラクター「エニーちゃん」

歴史と伝統を備えたご当地メニューを考察

淡路島は、兵庫県に属する瀬戸内海で最大の島である。かつて外部との交通はフェリーのみだったが、昭和60年に大鳴門橋、平成10年に明石海峡大橋の全線開通により、北は京阪神、南は四国へと商圏が広がり、経済効果や地域活性化が期待された。ところがふたを開ければ、激しい地域間競争にさらされ、島外への人口流出も加速してしまった。車で行き来できるようになったことで、島を訪れる観光客も日帰りが中心となり、マイナス面が浮き彫りとなった。

平成21年、そうした状況を打開しようと、島の商工業者が中心となって立ち上げたのが「御食国プロジェクト」だ。御食国とは、「皇室や朝廷の食料、神に供える御食(みけ)を奉る国」のことで、「淡路」「若狭」「志摩」の3つを指す。その名のとおり、淡路島の食料自給率は国内平均を大きく上回る107%を誇っている。果物並みに糖度の高い淡路島玉ネギやレタス、ブランド牛の淡路ビーフ、激しい海流が育む鯛をはじめとした魚介など、全国的に有名な食材が数多くある。それらを活用してご当地メニューをつくり、島の活性化につなげようという取り組みだ。同プロジェクトの事務局を預かってきた、洲本商工会議所経営支援課主任の川村兼康さんは当時をこう振り返る。

「飽食の時代において、新鮮な魚介をそのままご飯にのせた漁師めしをアピールしても、さほど新鮮味はありません。島の歴史や伝統を兼ね備えつつ、応用が利いて、しかもクセになる食べ物を探したところ、江戸時代の天保年間から続く『淡路手延べ素麺(そうめん)』とのコラボレーションが実現しました。これは戦後間もないころ、漁師が副業として製造を受け継ぎ、ピーク時には生産業者が50軒ほどあったんですが、プロジェクト開始当時には16軒にまで減っていました。地場産業を守る目的と、幅広い料理にアレンジできる点から、このそうめんを応用して新たなご当地メニューをつくることが企画されました」

レシピづくりを参加店の裁量に任せた理由

その際こだわったのは〝手延べ〟という点だ。機械ではつくれない手づくり麺であることを売りにしようと、ほかにはない新たな形状を模索した。生産業者の協力を得て試作を繰り返し、モニターアンケートも実施して検討を重ねた結果、太さ2㎜、長さ38㎝という従来品の倍近いサイズに決まった。この乾麺と名産の淡路島玉ネギを使ったメニューを「淡路島ぬーどる」と定義し、その販売に参加してくれる飲食店を募集したところ、33店が名乗りを上げた。

「『淡路島ぬーどる』といっても、決まったレシピがあるわけではなく、合わせる食材や調理法は店の裁量に任せ、販売価格も自由としました。そうして出来上がったものは、うどん風、ラーメン風、スパゲティー風、お好み焼き風、すき焼き風とバラエティーに富んでいて、一つとして同じものはありません。どの店でも同じものが出てくるなら、一度食べれば十分ですが、店ごとに味が違えば、その数だけ食べに来てもらえる可能性がありますから」と、川村さんは説明する。

「淡路島ぬーどる」と並行して、「島スイーツ」の開発も進めた。ご当地メニューは多いほど、食のバリエーションの豊富さをアピールできる上に、地産地消効果も高まる。スイーツづくりの条件は、玉ネギをはじめ、淡路島産のフルーツ、牛乳、卵を使うこと。こちらも参加店を募り、それぞれ工夫を凝らしてもらった結果、プリン、ロールケーキ、パイ、ワッフルなど、多彩な商品が次々と誕生した。

自治体の垣根を越えにぎわいは島全体へ

同プロジェクトでは、毎年参加店を募集して新陳代謝を図っている。今年度は、「淡路島ぬーどる」の参加店が38店、「島スイーツ」参加店は27店にまで増えた。同島には、淡路市、洲本市、南あわじ市の3市があるが、自治体の垣根を越え、島全域に参加店が点在しており、その都度周遊マップを更新し、ホームページでも情報発信して、観光客の回遊性を高める工夫をしている。また、「食」を堪能しながら観光名所も回ってほしいと、花や温泉など「癒やし」をテーマにした演出にも力を入れ、PRに努めている。

8年目に突入する同プロジェクトだが、年々認知度が上がっており、現在東は名古屋、西は広島、南は香川と広範囲から足を延ばしてもらえるようになった。島の食に魅せられて、「移住して飲食店をやりたい」という問い合わせも来ており、現に大阪から移ってきた食堂が洲本市内にオープンして、「淡路島ぬーどる」にも参加しているという。

「あえて実績を出していませんが、少しずつ成果が上がってきていて、手応えを感じています。販売数や人気ランキングなどを数字で表してしまうと、『それならうちはもうやめた』と抜けてしまうところが出てくる可能性があります。店同士を競争させるのが目的ではなく、各店がご当地メニューをきっかけに集客につなげ、その結果、島全体ににぎわいをもたらすことが大事だと思っています。そのためにも、年一回、参加店が一堂に会して情報交換する場を設け、島全体の取り組みであることを一軒一軒に周知して、プロジェクトを長く続けることに主眼を置いています。10周年を迎えるときには、新たな企画を考えて、大いに盛り上げたい」と、現在同プロジェクトを担当している同所記帳指導員の角谷佳昭さんは、周年事業に思いをはせる。

地方創生を実現するには、地域資源を組み合わせ、地産地消、さらには地産他消を推進することが非常に大切だ。

※月刊石垣2016年6月号に掲載された記事です。

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