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テーマ別企業事例 女性目線の商品が次のヒットを生む「女子力」に新たな市場あり

事例2 目から美と健康をデザインするエビデンスに基づいた眼鏡革命

東海光学(愛知県岡崎市)

女子開メンバー。10人から現在は14人に増え、加入を希望する女性社員も多い。「今は売り上げ5億円を見込める商品開発が目標です」と金川さん(写真、前列中央)

今年3月に創業80周年を迎えた東海光学は、眼鏡レンズ専門メーカーとして第一線を走り続けている。2011年には女性社員が部門を超えて商品開発チームを誕生させた。その名も「女子開」。女性による、女性ならではの新商品を次々生み出し、女性社員の意識も、会社も大きく成長する起爆剤となっていった。

海外事業の開拓や自社ブランド開発で躍進

1939年の創業以来、東海光学は、〝より軽く、より薄く、よりクリアに〟というニーズに応え続けてきた。10年前、代表取締役に古澤宏和さんが就任して以来、同社はさらに勢いづいている。国内の眼鏡レンズ事業で確実に収益を上げ、海外の眼鏡レンズ事業と光機能事業を「成長のエンジンにする」というビジネスモデルを掲げ、業績を伸ばしてきた。今や海外の眼鏡レンズ販売実績は、世界64カ国へと広がっている。また、光機能事業は、3年前からは受託生産から自社ブランド製品の開発・販売にも乗り出している。

そんな機運に乗るように、女性社員らが「女性だからこそできることがあるのではないか」と考え、 女性だけの商品開発チーム、通称「女子開」の立ち上げを古澤さんに相談した。女子開の統括リーダー、金川幸子さんは当時を振り返りこう語る。

「眼鏡業界は基本的に男性社会。もっと女性目線で商品を開発することができないかと同僚の女性社員2人と、仕事帰りによく話し合っていたのが発足のきっかけです」

営業歴20年以上の経験から金川さんは、女性ユーザーのニーズをつかみきれていない眼鏡店の現状を肌で感じていたのだろう。そこで、眼鏡店からの注文をただ待つばかりではなく、自ら行動に出る。まずは同じ思いを持つ女性社員を集めようと、部署を超えて声をかけていった。人選条件はと聞くと「容姿です」と誤解や非難に臆することなく言い切る。

「自分磨きをしている人は、流行に敏感です。ここが重要なんです」

もちろん、容姿以外にも自主性があり、好奇心やチャレンジ精神が旺盛なことを条件とするのは言うまでもない。さらに、水面下で営業本部長や女性たちの上司に話を通し、協力体制を整えていった。2011年8月、正式に会社の公認を受けて総勢10人の女性たちによる「女子開」の活動が始まった。 「女子開は、経営理念の一つに掲げる、独自性の発揮を具現化した取り組みだと判断しました。他社がやらない、やれない、やりたくないことにチャンスがあります。就業時間内に女子開の活動を認め、業務との両立が図れるように各部署で工夫するよう促しました」と、古澤さんは当時を振り返った。

眼鏡レンズで肌を美しく見せたい

そんな社風が女子開発足の追い風になり、メンバーのモチベーションも上がっていった。発足後3カ月間をマーケティングに徹し、女性にとって美と健康は永遠のテーマであることを導き出していく。それに応えるレンズ、フレーム、眼鏡用ポーチのセット商品化を企画するが、古澤さんは、「待った」をかけた。「全てを同時に製作するのは、時間もコストも労力もかかり、リスクも高い。まずはわが社の強みであるレンズを開発し、小さな成功体験を積み重ねてはどうかと提案しました」

そこでレンズに的を絞り「美肌レンズでマイナス5歳肌!」をテーマに掲げるが、商品開発は一筋縄では進まない。特に頭を抱えたのがレンズの色だ。

「打開策になったのが、とある展示会でファッションメガネコーディネーターの八尾典子さんと出会ったことです。八尾さんから色について専門的に学ぶことで、割れた意見は自然と一つにまとまっていきました」(金川さん)

色を論理的に理解する重要性を感じた女子開メンバーたちは、時間をやりくりしながら、パーソナルカラーアドバイザーの資格を取得する。さらに金川さんと女子開立ち上げに関わった同僚2人はパーソナルカラーアドバイザーの認定講師の資格を取り、色の知識を伝え、広めるまでになっていく。 だが、レンズの色開発の苦難は続く。次は職人たちから「そんな色は無理」と突き返されてしまうのだ。しかし、女子開のメンバーは諦めない。近い色ではなくピンポイントの色を出してほしいと迫り、約3カ月間、試作レンズは100枚を超えて、ついに美肌をテーマにした理想のレンズを完成させる。「『肌美人』という商品名も彼女らの発案です。彼女たちの自主性に任せた結果の革新的商品に、勝機を感じました」(古澤さん) 女子開は「販売も自分たちで」と取引先である全国の眼鏡小売店で、販売支援セミナーや実演販売会も企画し、いつしか年間約250回にも上る「おしゃれ眼鏡相談会」をこなすまでになっていく。

「ファッション的要素を、感覚ではなく色彩学に基づいて説明できることが男性からも支持され、肌美人は好評を博しました」と古澤さんも笑顔で語る。

新商品を次々開発し新たな販路を開く

この勢いにのって生まれた第2弾開発商品が、ピンク色のサングラス「美美(びび)Pink」だ。コンセプトは女性のホルモンバランスの変化による心身の影響の軽減で、NHKで紹介されたのをきっかけに、名古屋市立大学から共同開発の声がかかり、18年9月集中力を高めるオーバーグラス「心冴(ここ)Blue」が発売された。

「東海光学をもっと有名にしたいという思いが、女子開の原動力です」と語る金川さん。エビデンスをしっかり取った女子開の商品は、多くのメディアで取り上げられ、東海光学の知名度を一気に押し上げる。小売りベース70億円をたたき出す勢いで、今後の女子開の活躍に大きな期待が高まる。

会社データ

社名:東海光学株式会社(とうかいこうがく)

所在地:愛知県岡崎市恵田町下田5番地26

電話:0564-27-3000

HP:http://www.tokaiopt.co.jp/index.asp

代表者:古澤宏和 代表取締役社長

従業員:407人

※月刊石垣20190年4月号に掲載された記事です。

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