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コラム石垣 2016年12月11日号 神田玲子

アメリカの大統領選挙は、大方の予想に反し、トランプ氏が勝利を収めた。選挙戦でトランプ氏が掲げた選挙公約は、妥当性が疑われるものも多かった。例えば、アメリカ人の失業を減らし、雇用を取り戻すために移民の流入を規制すると主張している点である。

▼移民の流入がアメリカの労働者に不利に働いたかどうかは、専門家の間でも議論が分かれる。これまでの実証的な分析の結果では、技術革新や海外へのアウトソーシングによる影響の方が、移民による影響よりもはるかに大きいとされている。クルーグマンをはじめ著名な経済学者もメディアを通じて根拠がないと批判を行った。しかし、トランプの支持者には通じなかったようだ。

▼エスタブリッシュメントと呼ばれる専門家の声が、政治においていかに無力であるかは、今に始まった話ではない。その原因は何か。アメリカの歴史学者であるクリストファー・ラッシュは、大衆の側ではなく専門家の側に原因があると主張した。90年代に書かれた、『エリートの反逆』という書物の中で、現代の民主主義の病は、何が問題なのかを指し示すべきエリートたちが民衆との接触を欠いていることだと指摘した。ラッシュの目には、個人の能力に重きを置く専門家は、歴史やコミュニィティーから得ている恩恵を忘れ、一般の人々と課題を共有できないばかりか、社会から離れようとしている、と映る。

▼これはアメリカに限った話ではない。日本も同様だ。専門家と一般の人々の間の距離を縮めるには、有権者と専門家が共通の場で議論を重ねるしかない。国民が政策決定のための議論に、専門家と共に参加していくための仕組みを構築することが、ますます重要になっている。

(神田玲子・NIRA総研理事)

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