コラム石垣 2016年12月1日号 中山文麿

先月、ドナルド・トランプ氏が次期アメリカ大統領に選出された。安倍晋三首相は急きょ彼と面談し、友情と信頼関係を構築することでお互いに確認した。

▼今回の大統領選挙は過去に例のない異例なものだった。民主党のヒラリー・クリントン候補とは突っ込んだ政策論争もなく中傷合戦に終始した。

▼当初、トランプ氏は泡沫(ほうまつ)候補と見なされていた。彼はアメリカが移民の国にもかかわらずイスラム教徒は入国禁止だなどと暴言を吐いてメディアの注目を集めた。しかし、主要メディアは、2紙を除き57紙が彼に反対の論陣を張った。共和党の主流派も彼を代表候補に選出後も非協力的だった。

▼一方で、伝統的に労働組合の強い民主党の牙城であったペンシルベニア州などではグローバル化に取り残された白人労働者がトランプ氏を支持した。貧困白人は今の自由貿易や民主主義に疑問を抱き彼の主張するチェンジにかけた。この反乱はワシントンのエスタブリッシュメント(支配階級)にも向けられ、クリントン氏も同類と見なされた。

▼このように所得格差の大幅拡大や固定化の動きは自由貿易や民主政治にとって危機である。グローバル主義を適切に制御したり、ウォールストリートの強欲資本主義をある程度抑制しないとアメリカンドリームを描けなくなった貧困白人や若者達を納得させられないだろう。

▼これからトランプ氏は自らあおったアメリカ社会の分断と亀裂をどのように修復していくのか。また、その政策は当然日本にもはね返ってくる。日本もこれまで政治や経済面でビッグブラザーであったアメリカの背中を見て走ってきたが、ここで一度立ち止まってわが立ち位置をしっかり見極めることが肝要だ。

(中山文麿・政治経済社会研究所代表)

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