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コラム石垣 2016年11月11日号 丁野朗

昨年は、外国人観光客による消費が大幅に増加した。2015年の訪日外国人消費額は約3・5兆円に達し、前年の約2兆円に比べ72%増となった。その過半は、中国人観光客による買い物消費であり、いわゆる「爆買い」という言葉がマスコミをにぎわせた。

▼しかし、日本百貨店協会が発表した4月の外国人観光客の売上高は、前年同月比でマイナスに転じるなど、早くも「爆買いのピークアウト(終焉)」といった記事も目立つようになっている。

▼ここ2~3年、わが国の観光は訪日外国人客の動向に踊らされてきた。しかし、冷静に足元を見ると、日本人による国内観光消費額(国内の宿泊・日帰り旅行+海外旅行)は、直近の2006年の28兆円をピークに正式統計のある2014年の約20兆円と30%以上も縮小している。この結果、訪日外国人消費額を合計した2014年の観光消費額総額は22・5兆円で、前年の23・6兆円より1兆円以上も縮小していることになる。

▼観光は「経済波及効果が大きく裾野の広い産業」といわれ続けてきた。しかし、これはいささか「タナボタ的現象」にすぎないという印象を拭えない。観光が真の意味で「裾野」が広いといえるためには、その「裾野」にある多様な産業や人脈・組織などとのリアルな地域内での連携が不可欠である。観光とは、まさに地域の農林漁業や製造業、商業など、多様な産業との連携による「地域の総合力」が試されているからである。

▼観光がけん引役となって、地域にある多様な産業を刺激し、新たな地域産業(ビジネス)と雇用を創出して初めて「観光は裾野の広い産業」といえるのではないか。観光業界にはそのリーダーシップが問われている。

(公益社団法人日本観光振興協会総合研究所長・丁野朗)

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