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コラム石垣 2016年9月1日号 神田玲子

7月の参議院選挙で与党が勝利し、政策についての国民の支持が得られたかのようだ。しかし、実際は、いくつか気になることがある。

▼消費増税の先送りをすれば税収が減少するが、その分の財源はどう確保するのか。この点について、選挙期間中、具体的な議論がないままに選挙戦が進んだ。また、それに対して批判の声もほとんど聞かれなかった。消費税の先送りは、持続可能な社会保障制度や財政健全化への懸念を強めるはずなのに、どうやら耳当たりのよい政策が国民に受け入れられているようである。国民が「何とかなる」と気楽に思い、政策に無頓着となっているとすれば、それは今後の政策判断を誤らせることにもつながる。

▼また、二度にわたり消費税の実施を先送りしたという事実である。その判断が仮に正しかったとしても、今後の政策運営は縛られることになる。将来の政策の実施を掲げても、実現するかどうかは分からないと見透かされてしまい、後続の政策や経済の姿が定まらない。その結果、将来の不確実性は増してしまう。本来の政治の役割は将来の不確実性を下げることにあるはずだ。

▼こうした問題を放っておくのは、事態を悪化させるだけだろう。重要なのは、経済政策について丁寧に説明し、政策への信頼性を取り戻すことである。総理の指導力は重要であり、時には大胆な判断が必要であることは間違いない。かといって、決断に至った判断について合理的に説明しなくてよいということではない。国民がふに落ちて納得できる仕方で政策を説明していく必要がある。どのような政策であれ、政策運営についての判断が国民から理解されなければ、その政策の実効性が失われるはずだ。

(神田玲子・総合研究開発機構理事)

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