最近の世界的な日本食ブームを背景として、地球の裏側にまで「活魚」を送る計画が進められている。生け捕りにした魚を炭酸ガスが入った海水の中で仮死状態にした後、今度は酸素のウルトラファインバブル(以下UFB)で満たした海水に入れて送るのである。この魚を通常の海水に戻すと、元気に泳ぎだし、新鮮なすしネタになる。
▼UFBというのは1千分の1ミリメートルの極めて細かいバブルである。技術的には1万分の1ミリメートルまで微細化することも可能だ。これほど微小だとバブルそのものには浮力が働かず、水中に溶け込んだ状態になる。このUFBの中にどんな気体を入れるかによっていろいろな機能・用途が出てくる。
▼養殖場で酸素を入れたUFBで魚を育てた場合、ウマズラハギが1・5倍の大きさに成長した。また、トラフグの出荷日数が24カ月から14カ月に短縮できることも分かった。さらに、酸素のUFBを入れた水でショウガを栽培したところ、根が非常に丈夫になり収穫量が大幅に増加した。
▼このようにUFBはさまざまな産業分野で利用可能だ。2010年に1260億円であった市場規模が、2030年には100倍の12・7兆円になるとの予測も出てきた。西日本の地方自治体や中小企業はこの技術に着目して積極的に事業化に取り組んでいる。この技術は地域の活性化に役立ち、地方創生のための一つの大きな武器になりそうである。
▼日本はUFBの製造技術や計測装置の分野で世界に抜きん出ている。従って、日本のイニシアチブによって、まずUFBのISO国際標準化を実現するとともに、この技術を引っ提げて世界のさまざまな産業分野に積極的に打って出てもらいたい。
(中山文麿・政治経済社会研究所代表)
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