政府は地方創生に向けた基本方針を策定し、地域の「稼ぐ力」を引き出すことを目指している。その成否の鍵を握るのが地域の公益企業だ。電力・ガス、鉄道、通信、道路といった社会資本を提供する公益企業は、事業展開や人材を集積する上で極めて重要な役割を果たす。しかし、実際には人口減少が急速に進行する中で、こうした公益企業は収益が圧迫され、悲鳴を上げている。
▼その背景にあるのが、ユニバーサルサービスの重荷である。日本中のどの地域にも郵便は届く。どこに住んでも電柱が敷設され、電話線の工事もしてくれる。こうしたことが当たり前であるのも、公益企業にユニバーサルサービスを法律で課しているからにほかならない。国民の生活に欠かせない公共サービスについては、地域ごとに差はあるが一律の料金で全ての国民にサービスを提供することが法律で義務付けられている。
▼これまでサービスを提供するための費用は、収益の黒字の地域から赤字の地域へ内部補助を行うことにより賄ってきた。しかし、それも人口減少に伴い全体の収益が伸び悩む中で限界に来ている。
▼政府は地方の中小都市のコンパクトシティー化を提唱している。ならば、それに合わせてユニバーサルサービスの在り方も議論するべきである。サービスを提供しない区域を制定する、あるいは、コンパクトシティーの区域内の住民の公共料金を安くすることで、まちの周辺に移動させるインセンティブを高めることもできる。実施への抵抗は大きいだろうが、5~10年タームであらかじめ周知すれば、大きな影響を与えずに済むだろう。淡い夢を追いかけているだけでは「稼ぐ力」につながる未来は開けない。
(神田玲子・総合研究開発機構研究調査理事)
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