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コラム石垣 2015年2月1日号 神田玲子

先日、秋葉原にある市民工房施設「ファブラボ」を見学した。超高層ビルのフロアに、3Dプリンターや3Dスキャナーなどの工作機械がぎっしり並べられている。会費を払えば、誰でも最新の機械を使って自分のアイデアをスクリーンに描き出し、立体的な模型をつくることができる。まさに、21世紀の産業革命ともいわれている「メーカーズ」によるものづくりが、都市の真ん中で展開されている。

▼メーカーズを担うのは若者ばかりではないことも驚きだ。数人の中高年の男性が、机の上で黙々と手を動かしている姿が目立った。一流企業に勤めている技術者が、自社では製品化できない自分のアイデアをここで試していることもあるという。また、企業を定年退職後、自分の技術を十分に生かせていない、かつてエンジニアとして活躍した人たちも参加しているらしい。

▼明るい未来を予感して身震いするのは、初めてのことだ。技術や知識さえあれば、数人の仲間とここに来て最先端のものづくりに挑むことができる。しかも、年齢に関係なく、意欲があれば誰でもものづくりをすることができる夢の工場だ。

▼ファブラボを考案したMITのガーシェンフェルド教授は、3Dの工作機械が普及されれば、地域が抱える固有の問題を地域で解決できるようになるという。日本でも、ファブラボが地域に普及すれば、地域発のイノベーションが数多く生まれるに違いない。アメリカでは1000カ所の学校にファブラボを設置しようとしているという。世界中の人々が、身近な場所でものづくりができるようになれば、貧困や格差といった解決困難な課題にも光明を見いだせるのではないだろうか。

(神田玲子・総合研究開発機構研究調査理事)

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