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真壁昭夫の経済底流を読み解く どうなる中国の株式バブル 景気減速が鮮明化

6月以降、中国の株式市場が一段と不安定な展開を見せている。特に、上海の株式市場は主要国の株式市場の中でも下落幅が大きくなっている。この下落に対し、中国証券監督管理委員会(CSRC)は、「急速な株価上昇を受けた調整である」との認識を示して、投資家にパニック的な売買を控えるようにとのスタンスを取っている。そうした動きの背景には、中国の政策当局が、株式市場の変動に相当神経質になっていることがうかがえる。

景気減速への懸念が高まる中国にとって、株価の過度な変動は人々の心理状況にもマイナスの影響を与える可能性が高い。年初来、中国の株式市場で大半の取引を占める個人投資家が、政府の景気対策への期待を強めて株式を買い、株価は勢いよく上昇していた。市場関係者の一部からは、「中国の株式市場では間違いなくバブルが発生している」との指摘が高まっている。

6月以降の株価下落は、そうした警鐘が現実のものになったということだろう。それに対して中国政府は、景気対策として金融緩和策を実施しているものの、なかなかその効果が顕在化していない。その意味では、中国政府は実体経済の減速と株価の不安定な展開の二つの問題と対峙しなければならない状況に追い込まれている。

景気の先行きを考える上で株価は重要なファクター(要因)の一つだ。株価の上昇は、資産効果を通して消費意欲を支え、景気にもプラスに働く。そのため、中国政府も株式市場の下支えを狙い、金融緩和策などの対応策を取ってきた。

中国政府の株式市場に対する政策の一つに、上海と香港の取引所間での株式の相互取引を可能にしたことがある。これにより外国人投資家は香港市場を経由することで、取引に規制がある上海市場にも投資できるようになった。中国国内でも、相互取引を活用して信用取引が活発化したと考えられる。

特に4月から6月中旬までの間、上海の株価指数は30%以上の上昇を記録した。足元の急速な株価上昇は、明らかに過度な投資行動の結果で、間違いなく一種のバブルだった。

減速傾向が鮮明化する中国経済の中で、不動産バブル崩壊の懸念や、鉄鋼業界などにおけるリストラ圧力に直面する中国政府は、株価の安定化によって景気の下支えを意図したと見られる。ただし、足元の株価の不安定な動向を見ると、中国国内の投資家に加えて海外投資家も中国の株式バブルに警戒を強めている。最近の中国株式市場の不安定さは、そのマグニチュードを増している。

一方、相場全体が大きく下げたケースでも、証券取引所に上場した大手証券会社の国泰君安は値幅制限いっぱいの44%も上昇したことを見ると、中国の個人投資家のIPO(新規上場の株式)に対する関心は依然として高いようだ。そうした投資家の動きが続く間は、むしろ株式市場の価格変動性を低下させることが難しい。当面、中国政府の株価安定策の効果は限定的とならざるを得ないだろう。

そうした状況下で、景気減速が鮮明化しているだけに、中国国内外の投資家は必然的に下方リスクを意識しやすい。となると、一段と株価安定に向けた対応策が必要になる。

中国の中央銀行である中国人民銀行は、さらなる流動性の供給、利下げ、そして、量的緩和をも発動する可能性がある。また、年内には深圳と香港間の相互取引も開始される予定だ。そのほかにも中国政府は取り得る策を矢継ぎ早に投入し、相場の維持と景気支援を進める可能性がある。こうした措置が投資家のリスクテークを促し、相場の上昇をサポートする場面はあるかもしれない。

しかし、その効果には大きな期待を掛けられないだろう。実体経済と乖離した株価上昇は長続きしないからだ。根拠なき熱狂がいつかは終わることは歴史の必然である。中国の株式市場は、そのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に照らして冷静に評価される段階に差し掛かっていると考えるべきだ。

まかべ・あきお 1953年神奈川県生まれ。76年、一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。83年7月ロンドン大学経営学部大学院卒業。メリルリンチ社ニューヨーク本社出向などの後、市場営業部、資金証券部を経て、第一勧銀総合研究所金融市場調査部長。現在、法政大学大学院教授。日商総合政策委員会委員。『はじめての金融工学』(講談社現代新書)など著書多数。

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