経済産業省はこのほど、電力需給検証小委員会の報告書を取りまとめた。今夏の電力需給の見通しについては、電力の供給余力を示す予備率が全国平均7・0%で、電力の安定供給に必要最低限とされる3%以上を確保できる見通しを示した。
報告書では平成27年度夏季は、国民各層の節電の取り組みが継続されれば、いずれの電力管内でも、電力の安定供給に最低限必要な予備率3%以上を確保できる見通し(表1)。ただし、関西電力と九州電力管内は、単独では予備率3%以上を確保できないため、それぞれ48万kW、61万kWを他地域から受電せざるを得ないという厳しい状況にある。関西電力と九州電力が他社から受電しなかった場合、予備率はそれぞれ0・8%、マイナス2・3%となる。
計画外停止は依然増加傾向に
また、老朽火力を含む発電所の計画外停止は依然として増加傾向にあり、このまま火力発電への依存が高水準で推移すると、大規模な電源脱落が発生し、電力需給がひっ迫する可能性もあり、引き続き、電力需給は予断を許さない状況と分析している。
火力発電所については、電気事業法に基づき、原則として、ボイラーは2年ごと、タービンは4年ごとに定期検査を実施する必要がある。前回定期検査の終了から2年以上を経過した火力発電所は70機(全火力発電所の24%程度)に上り、前回定期検査の終了から4年以上を経過したものは5機(全火力発電所の2%程度)に上る。そのため、保安の観点から定期検査をする必要のあるものを見極めて定期検査を行うことになる。平成27年度夏季に定期検査などが不可避であると評価された火力発電所は42機に上る。
こうした状況を踏まえ、報告書では需給両面での適切な対策を検討する必要があると指摘。「火力発電設備の保守・保安の強化」「具体的で分かりやすい節電メニューを示しつつ必要な節電要請を行うこと」「ディマンドリスポンス(エネルギーの供給状況に応じて消費パターンを変化させる取り組み)などの促進を図ること」などを求めるとともに、電力広域的運営推進機関には、電力の安定供給確保に万全を期すことを訴えている。
燃料コストは3・4兆円増
さらに、深刻な問題として、電力需給の量的なバランスのみならず、原発の稼働停止に伴う火力発電の発電量増による燃料費のコスト増やCO2排出量の増加を挙げ、エネルギーミックスの議論も踏まえ、コスト抑制策や、エネルギー源の多様化、調達源の多角化などに取り組む必要があると強調している。
原子力発電所の停止分の発電量を、火力発電により代替していると仮定し、直近の燃料価格などを踏まえて試算すると、東日本大震災前並み(平成20~22年度の平均)にベースロード電源として原子力を利用した場合に比べ、平成26年度の燃料費は約3・4兆円増加(人口で割り戻すと、国民一人当たり3万円弱の負担増加)(表2)。原油価格の値下がりはあったものの、それでも引き続き多額の燃料費増が続いている。
累積での増加額は、平成26年度末までに12・4兆円。人口で割り戻すと、国民一人当たり10万円弱に達したと試算している。
また、日本が発電用燃料を海外からの輸入に依存する電源構成(石炭、石油、LPG、LNGなど)の割合は、東日本大震災前の平成22年度には約61%であったが、震災後の平成25年度には88%を超え、オイルショック時(昭和48年度=76%)を上回っている。
また、火力発電の燃料である化石燃料の大部分は特定の地域からの輸入に依存している。資源調達における交渉力の限界などの課題や、資源調達国やシーレーンにおける情勢変化の影響による供給不安に直面するリスクを常に抱えており、東日本大震災以降、このようなエネルギー供給構造の脆弱性が非常に高まっていると指摘している。
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