加茂商工会議所(新潟県)と加茂鉄工業協同組合はこのほど、かねてより開発を進めていた「らせん式マイクロ水力発電機」の可能性を認められ、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施している「中小企業海外展開支援事業~基礎調査~」の採択を受けた。今秋から、マイクロ水力発電装置を途上国向けに改良、実用化するため、カンボジアでの現地調査に乗り出すことになった。
同所の鉄工部会は平成21年、会員鉄工事業所の技術力向上と受注機会の拡大を図ろうと、有志11社による金属製造業技術集団「Tech×Tech KAMO」を設立。地域内外で人的交流や共同受注などを積極的に行っていた。その後、同集団のアドバイザーからの「新エネルギー分野であれば、今後の需要が期待できる」との提案と、メンバーらの「加茂地域が持つ技術を協力して駆使し、下請けではなく何か形のある製品をつくりたい」との思いが融合。市場調査の結果、中小企業の参入も少なく、ニッチ市場として注目される可能性の高い、小型の「らせん式マイクロ水力発電機」の共同開発に取り掛かることとなった。
当初は、産業集積もない地域に何ができるのか、といった不安の声も多かったが、国内需要を見込み、地道な努力と試行錯誤を繰り返し、挑戦を続けた。そんな中、第二号機の技術指導を行っていた専門家から、「加茂の装置は設置も簡易。東南アジアでのODA(政府開発援助)での需要があるのではないか」との助言を受け、海外展開に向け準備を開始。また、27年11月、日本商工会議所の定例会議で、JICAの海外展開事業を利活用する道があるとの手掛かりを得て、早速応募することにした。
このマイクロ水力発電装置は大型の発電装置に比べるとその出力は弱いが、ゴミにも強く、低落差、低水量でも安定的かつ効率よく発電が可能。まだインフラなどが整っていない途上国や山間部では、設置やメンテナンスが簡単で、価格も手頃な製品が必要だ。カンボジアでは電力部族により近隣国から電力を購入しているため、電気料金が高いという課題を抱えており、これを解決するため、今回の調査では事業展開にかかる規制の確認や市場調査、販路の検討を行うとともに、ODA事業との連携の可能性を調査する。
今回、商工会議所が先頭に立ち、今まで連携していなかった製造業者を地道につなげ、「ものづくり」へのやる気と誇りを感じてもらうことでさまざまな縁が生まれた。これを大切にし、力を合わせれば、産業集積のない地域でも世界に通じる何かがつくれることが証明された。他地域でも同様の心構えで地方創生への第一歩を踏み出してほしい。
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