公正取引委員会および経済産業省は、日頃より、下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)違反行為への厳正な対処を行うとともに、同法の普及啓発を行っております。
わが国中小企業の業況は、持ち直しの動きを示しておりますが、製造業を中心に依然として厳しい収益状況にあります。また、これから年末にかけての金融繁忙期を迎えるに当たり、下請け事業者の資金繰りなどについて一層厳しさを増すことが懸念され、親事業者が下請け代金を早期にかつ可能な限り現金で支払い、下請け事業者の資金繰りに支障を来さないようにすることが必要です。
貴社におかれましては、このような状況を十分に認識いただき、下請け事業者と十分な協議を行い適切な対価の決定を行う、事前に定めた支払期日までに下請け代金を全額支払うなど、下請け事業者への不当なしわ寄せが生じることのないよう、適正な取引の確保に向けて、社を挙げて取り組んでいただきますようお願いいたします。
特に別紙の記載事項については、調達担当者のみならず役員など責任者まで周知徹底を図り、担当役員などの責任者には調達担当者の指導および監督に当たらせるなど、適切な措置を講じるよう強く要請いたします。
さらに、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(平成25年法律第41号)が、平成25年10月1日から施行されています。貴社におかれましては、減額や買いたたきなどによる消費税の転嫁拒否などの行為を行うことがないよう、改めて貴社全体で適切な措置を講じるよう併せて強く要請いたします。
別紙 親事業者の順守すべき事項
下請け取引を行うに当たって、親事業者は、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という)に従い、下記事項を遵守しなければならない。
1 親事業者の義務
(1)書面(注文書)の交付および書類の作成・保存義務
・下請け事業者に物品の製造や修理、情報成果物の作成または役務提供を委託する場合、直ちに注文の内容、下請け代金の額、支払期日、支払い方法などを明記した書面(注文書)を下請け事業者に交付すること。(下請法第3条)
・注文の内容、物品などの受領日、下請け代金の額、支払日などを記載した書類を作成し、これを2年間保存すること。(下請法第5条)
(2)下請け代金の支払期日を定める義務および遅延利息の支払い義務
・下請け代金の支払期日は、親事業者が下請け事業者から物品などを受領した日から60日以内において、かつ、できる限り短い期間内に定めること。(下請法第2条の2)
・支払期日までに下請け代金を支払わなかったときは、下請け事業者から物品などを受領した日から起算して60日を経過した日から支払いをするまでの期間について、その日数に応じ、未払い金額に年率14・6%を乗じた額を遅延利息として支払うこと。(下請法第4条の2)
2 親事業者の禁止行為
親事業者は次の行為をしてはならない。
(1)受領拒否の禁止
・納品された物品などが注文通りでなかった場合などを除いて、注文した物品などの受領を拒むこと。(下請法第4条第1項第1号)
(2)下請け代金の支払い遅延の禁止
・支払期日の経過後なお下請け代金を支払わないこと、すなわち下請け代金の支払いを遅延すること。(下請法第4条第1項第2号)
例えば以下の行為は禁止行為に当たります。
―受け取った物品などの社内検査が済んでいないことや社内の事務処理の遅れを理由に下請け代金の支払いを遅延すること。
(3)下請け代金の減額の禁止
・下請け事業者に責任がないのに、発注後に下請け代金を減額すること。(下請法第4条第1項第3号)(減額の名目、方法、金額の多少、下請け事業者との合意の有無を問わない)
例えば以下の行為は禁止行為に当たります。
―単価の引き下げ改定について合意した場合に、合意前に既に発注されているものにまで新単価を遡及(そきゅう)適用すること。
―手形払いを下請け事業者の希望により一時的に現金払いにした場合に、その事務手数料として、下請け代金の額から自社の短期調達金利相当額を超える額を減ずること。
(4)返品の禁止
・取引先からのキャンセルや販売の見込み違いなど、下請け事業者に責任がないのに、下請け事業者から物品などを受領した後、下請け事業者にその物品などを引き取らせること。(下請法第4条第1項第4号)
(5)買いたたきの禁止
・同種、類似の委託取引の場合に通常支払われる対価に比べて著しく低い下請け代金の額を不当に定めること。(下請法第4条第1項第5号)
例えば以下の行為は禁止行為に当たります。
―親事業者の予算単価のみを基準として、一方的に通常の単価より低い単価で下請け代金の額を定めること。
―多量の発注をすることを前提として下請け事業者に見積もりをさせ、この見積価格を少量発注する場合に適用すれば通常の対価を大幅に下回ることになるにもかかわらず、その見積価格の単価を少量の発注しかしない場合の単価として下請け代金の額を定めること。
(6)物の購入強制
・役務の利用強制の禁止・正当な理由なくして、自社製品、手持ち余剰材料その他自己の指定する物を下請け事業者に強制して購入させたり、役務を強制して利用させること。(下請法第4条第1項第6号)
(7)報復措置の禁止
・下請け事業者が親事業者の違反行為について公正取引委員会または中小企業庁に知らせたことを理由として、取引の数量を減じたり、取引を停止するなどの不利益な取り扱いをすること。(下請法第4条第1項第7号)
(8)有償支給原材料などの対価の早期決済の禁止
・親事業者が原材料などを有償で支給した場合に、この原材料などを用いて下請け事業者が製造または修理した物品の下請け代金の支払期日より早い時期に、この原材料などの代金を支払わせたり、下請け代金から控除すること。(下請法第4条第2項第1号)
(9)割引困難な手形の交付の禁止
・下請け代金の支払いにつき、下請け代金の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することにより、下請け事業者の利益を不当に害すること。(下請法第4条第2項第2号)
手形サイトは、原則として、120日以内(繊維業にあっては90日以内)とすることとされている。(通達41公取下第169号および第233号、41企庁第339号および第467号)
(10)不当な経済上の利益の提供要請の禁止
・下請け事業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、下請け事業者の利益を不当に害すること。(下請法第4条第2項第3号)
(11)不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
・下請け事業者に責任がないのに、発注内容の変更を行い、または下請け事業者から物品などを受領した後(役務提供委託の場合は役務の提供後)にやり直しをさせることにより、下請け事業者の利益を不当に害すること。(下請法第4条第2項第4号)
買いたたきの事例などを解説した「ポイント解説下請法」は、公正取引委員会または中小企業庁ホームページからダウンロード可能です。
公正取引委員会:https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/pointkaisetsu.pdf
中小企業庁:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2007/070713shitaukedaikin_guide.htm
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