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アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 分断のアジアでどう動くか

米中の狭間に揺れる台湾で、先端技術開発をリードする「台湾工業技術研究院」(ITRI)

アジアの新型コロナウイルス感染はピークを越えた。第二波、第三波の感染拡大のリスクはあるにせよ、平時に向かっているのは間違いない。だが、別の深刻な問題が日本企業に迫っている。米中の対立深刻化、「米中冷戦」である。日本企業は感染症やテロなどのリスクには敏感で、迅速な対応を取るが、覇権争いのような政治・外交・軍事の対立は直視しない傾向がある。政治対立には巻き込まれたくない、自らの考えを鮮明にしたくない、政府に任せたいと考えるからだ。砂に頭を突っ込み嵐の去るのを待つ、「ダチョウ症候群」に近い反応かもしれない。ただ、現実に対立の嵐が近づく中で、立ち止まっていれば吹き飛ばされるだけだ。

世界の半導体業界で売上高上位3位に入り、技術力トップと目される台湾の半導体受託専門メーカー、TSMC。同社はトランプ政権の圧力で、スマートフォンや5G基地局で世界をリードする中国のIT企業、ファーウェイとの取引を打ち切り、さらに米アリゾナ州への半導体工場進出も決めた。米中の狭間(はざま)で揺さぶらされた末の、苦難の決断だった。これほどではないだろうが、これからアジアにおけるビジネスでは大なり小なり、米中のいずれかを選ぶ局面が十分考えられる。企業としては「どちらの顧客も大切にしたい」「物事を荒立てたくない」のは当然だが、そうは言っていられない場面が一度や二度は来るはずだ。

重要なのは、その可能性をあらかじめ想定し、選択と戦略を用意しておくことだ。選択には企業としての考え、理念が込められていなければならない。その上で選択の結果としての自社の損失を最小限に防ぐ戦略が必要だ。例えば、事業部門を中国向けとそれ以外の顧客向けに分社することや、中国拠点の生産品のうち対米輸出分は別の拠点に生産移管しておく、といった対応だ。意識しておくべきは、米国製の生産設備は、先端技術にかかわる分野では中国企業向けの製品供給に使うことが困難になる可能性があることだ。台湾のTSMCの決断には、米国製の半導体製造設備と原料の供給を断たれるリスクが大きな要因としてあった。

かつての米ソ冷戦は軍事・外交面での争いだったが、今回の米中冷戦は経済分野での戦い、とりわけ「技術冷戦」の面が強い。米国は中国に自国の先端技術が渡り、中国製造業がさらにレベルアップすることに、最も神経を尖(とが)らせている。アフターコロナでも、厳しい現実がアジアビジネスには控えている。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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