日美装建は、1994年設立のビルメンテナンス会社。病院・老健施設、飲食店・オフィスビルなどに清掃員を派遣している。作業現場の数が多いため、正確な作業指示の伝達、作業状況の把握、顧客情報の共有が難しいという課題を抱えていた。その解決策として導入したのがクラウド型CRM(顧客管理)プラットフォーム「セールスフォース」だった。
SFに出会う前は人員配置などに苦慮
日美装建は近年、業務用エアコンの清掃に注力し、年間約4000台以上の洗浄実績を有し、道内トップクラスのシェアを獲得した。全メーカーの清掃が可能で、全国にチェーン展開している大型店舗のエアコン清掃の依頼も多く、全道各地の現場作業を実施している。またエアコン修理、施工部門を3年前に独立させAIRNOTE社を設立、エアコンに対するサービスを〝一気通貫〟で行うことが可能となった。
代表取締役の大澤寛晃さんによると「『今日の今日でも何とかする』『24時間対応する』をモットーに自社部隊で現場に対応してきました。そのおかげで毎日の現場数、従業員数が徐々に増える一方作業時間も不規則のため、スケジュール管理、人員配置などに苦慮していました。そんな時にクラウドのイベント(クラウドとは知らず)にお誘いをいただきました。それがSalesforce(SF) との出合いでした」
出合ったのは2014年の秋。すぐに商談に入り、翌15年2月に運用がスタートした。
「その時の当社の現状はというと、一日の案件数が多く、作業内容や作業箇所などの情報を、口頭や指示書で伝達しており、大事なことが正確に伝わっていなかった。また取引先などさまざまな情報を個人が所有しており、会社の全体像が全く見えていなかった。そして作業日報を月次で締めて回覧していたため、赤字の現場や問題のあった現場からの報告にタイムラグがあり、対処方法や戦略が遅れ、機会の損失が発生していました」
そんな状況でSFのクラウドに求めたのは大きく分けて以下の3点だった。
⑴案件、作業報告書(日報)のペーパーレス化、コストの見える化
⑵取引先情報の見える化
⑶作業担当者の労働時間の見える化
ただ、一番の目的だったスケジュール管理は実際には全く使えないと判断し不可としたという。
まずは自分が勉強し身の丈ITを実施
ところが、当時の状況を大澤さんはこう振り返る。
「完成したはいいが、出来上がったものが本当に良いものなのか、使えるものなのか……。正直、思っていたものと違うなぁ、というのが本音で、社員に任せることが不安になりました。そこでやったのが、まずは自分で毎日の作業日報(現場報告書)を全て(毎日10件ほど)入力していきました。毎日入力しても何が良いのか分からないため、次にSalesforceの研修を受けました。それが分岐点で、まさしく眼からうろこの情報ばかりで、色々なことが理解できカスタマイズできるようになりました」
その結果、違和感のあった画面が使い慣れたエクセルの「作業日報(現場報告書)」と類似したものになったことで使いやすくなったという。
「そこでやっと、案件の作成を事務に任せ、現場報告を各担当者に入力させることができました。それ以降、車両管理の画面やワークフローなどもできるようになり、一層進化したクラウド活用になりました。しかしそれ以上自分でやっていくことは本末転倒であると考え、思いきって専門職の募集をしました」
それが現在KLever(日美装建でのSFの導入支援事業部門を19年1月に分離独立)代表の長谷川慎さんとの出会いだった。
まったくSFを知らなかった長谷川さんもSFの魅力に取りつかれどんどん資格を取り、SFとパートナー契約を結ぶまでになった。また、現場の社員への分かりやすい指導により社内へのクラウド定着化が進み、また見積書のペーパーレス申請(モバイル承認)、請求書の発行まで可能となった。
同社の現場は医療機関や商業店舗などが多いため、新型コロナウイルスの問題が発生してすぐ、朝と現場に入る前とに必ず検温し体温報告をLINEでさせていた。
「5月からはSFに検温管理画面を作成し、携帯電話から入力して、自動的にデータがあがるように変更しました。入力時間は10秒もかかりませんし、簡単に入力が可能となっています。クラウドは個人が入力してくれる仕組みをつくるだけで、会社が得たい情報を得ることができますので非常に便利です」
大澤さんはこう振り返る。
「クラウドを導入していなかったらこの莫大な案件管理は難しかったと考えています。本当に良いタイミングで、そして少しでも早く導入できて良かったと実感しています。5年間の案件情報、取引先情報などがクラウドに溜まっており、当社にとって貴重な情報価値、財産となっています」
経営者の迅速なIT導入の決断が、会社にかけがえのない財産をもたらした。
会社データ
社名:日美装建株式会社(にちびそうけん)
所在地:北海道札幌市西区八軒5条東5丁目2番15号
電話:011-700-0132
代表者:大澤寛晃 代表取締役
従業員:30人(パート約300人)
※月刊石垣2020年7月号に掲載された記事です。
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