コロナに負けない「追い風」を見つけた社長にお会いしました。その会社は事務機器関連の商社ですが、4月の売り上げが5割以上も減少。危機的な状況に陥りました。そこで挽回策を検討すべく、コロナの状況でも注文が増えている商品がないか分析を始めたタイミングに不動産仲介の大型チェーンからある商品の大型注文が入りました。それは間仕切りに使う透明のアクリル板でした。現在では感染リスクを避けるため、設置が当たり前のようになりつつありますが、当時は売れ筋とは言い難い商品でした。
社長は営業担当に注文の背景を聞くように指示。すると、非常事態宣言解除の後に安心して来店いただくためには必須だという判断が背景にあることが分かりました。社長は「たまたま」の注文ではなく、時代が求めている注文であると感じました。店舗だけでなくオフィスも含めて、感染リスクを回避するためには相当数のアクリル板が必要になると確信。そこで海外の工場に相当数の製造を依頼しました。非常事態宣言が解除されて、アクリル板の注文が大量に舞い込みましたが、納期通りに収めることができました。
現在でもアクリル板の注文は増えており、業績は例年以上に上がる見込みまで回復しました。もし、コロナの影響を悲観するだけで動かなかったら、業績は悲惨なことになっていたかもしれません。アクリル板で大きな収益を得られるのは、あとわずかかもしれませんが、会社の危機を救ってくれたのは間違いありません。
このように不測の事態に遭遇すると、これまでの売れ筋商品が売れなくなることがあります。ただ、別のニーズが生まれる機会でもありますから、不測の事態が通り過ぎるのを待つのではなく「時代が求めている注文」を探ってみる機会にしてみてはどうでしょうか? アクリル板のようにこれまで取り扱っていたのですが、ぱっとしなかった商品が売れ筋商品に変わる可能性があります。
例えば、通販会社に聞いたところ、自宅での食事や動画配信サービスの利用など、宅内での消費が増えて、調理家電や高級調味料の注文が大幅に増えているとのこと。昨年まではイベント、旅行、会食などの「コト消費」に注目が集まり、宅内での消費に関わる商品なんて大して売れない…と思われていました。ところが、4月あたりから注文が急増。通販会社各社が在庫の確保で競争状態になったようです。
不測の事態も追い風にすべく、お客さまの注文に注目していきましょう。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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