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「下町育ちの再建王」の経営指南 〝素頭(すあたま)〟を磨いて心の陰を読む

武術(剣術)に陰(かげ)流という流派があるのをご存知でしょうか。陰流は室町時代に編み出され兵法の三大源流の一つにも数えられる流派で、後に新陰(影)流や柳生新陰(影)流など、多くの流派の元となりました。

陰流の陰とは、見えないモノ、隠れているモノのことで、言葉や行動以外の、しぐさとか表情に出る感情や心模様、本人ですら気が付いていない心の動揺など、目に見えない心の変化を指します。惻隠(そくいん)の情とでも言いますか、それを感じ取る感覚を研ぎ澄まし、逆に相手を突いて打ち負かすのが、陰流というわけです。

剣の技だけでなく、人としても達人の域が求められる陰流ですが、実は私たちも毎日〝陰の技〟を使って生きています。

例えば、部下の元気がないのは、売り上げが伸びないせいか?体調が悪いのか?それともプライベートが上手くいっていないのだろうか?とか。表に出ない心模様をすくい取ることが陰の技です。しかしこれには明らかに上手下手があります。

私はこの陰の技が上手な人、人の心がわかる人のことを〝素頭〟が良い人と呼び、ここでも何度もお話ししていますが〝素頭〟が良い人は、相手と自分の関係性を深くすることが出来ます。これは会社の経営者、営業マン、家庭人どんな立場で考えても非常に大切な能力といえるでしょう。

ビジネス面における陰の技として、私の仕事、コンサルタントを例に挙げてみましょう。私は支援先と親しくなるまでは、依頼に基づき売り上げ面でお付き合いします。しかしオーナーと親しくなってくると、事業に影響しているプライベートな問題まで関係していきます。

例えば、夫婦で始めた宝石店が3店舗と拡大し、オーナーは今後も店舗数を増やしていきたいのに、奥さんが君臨しているので女子従業員が成長しない。そろそろ奥さんには引退してもらいたいが言い出せない。そんな時、私ならお二人を前にして「もうそろそろ奥さんには経理を見ていただくようにして、たまにはお友達と旅行に行かせてあげてください。オーナーはいつまで奥さんに働かせるつもりなんですか~」というようなことが言えるのです。

家業を企業に成長させる為には、猫の首に鈴をつける役を買って出ることもあります。

経営者は孤独です。だからこそ数字を上げるだけでなく、表では言えない陰の部分のバックアップこそ、私の仕事なのです。

人と付き合う時、光の当たる部分よりも陰の方が実は重要な場合があります。無意識に人の心を読むことは、ビジネスの奥義。消費者の陰の意識を読み解くことは、新ビジネス創造の鍵でもあるのです。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長(前 船井総合研究所 代表取締役会長) 昭和22年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。59年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。平成12年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。22年には代表取締役会長に就任。25年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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