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年金制度改正のポイント 第3回 適用拡大をチャンスに変える

適用拡大の対象となった場合、保険料負担による人件費増となるほか、従業員の働き方にも影響する可能性がある。制度改正に伴う環境変化に対してどのような対応が考えられるか、どのような支援策が活用できるのか、詳説する。

使える助成金など

適用拡大の施行は2022年10月(100人超企業)・24年10月(50人超企業)だが、多くの企業にとってはその前に、新型コロナウイルス感染症への対処が喫緊の課題となろう。政府全体として、政府系融資による資金繰り支援、最大200万円の持続化給付金、最大日額1人当たり1万5000円の雇用調整助成金による雇用維持支援など、さまざまな施策を講じている。社会保険料についても、1年間無利子・無担保の納付猶予、標準報酬の特例改定による保険料軽減を可能としており、まずはこれらを活用し、目の前の苦境を乗り越えていただきたい。

その先にある適用拡大に向けては、1人当たりの収益増加によって人件費増に対応すること、すなわち生産性の向上を図ることが肝要である。政府の「生産性革命推進事業」では、設備投資などを支援する「ものづくり・商業・サービス補助金」、販路開拓などを支援する「持続化補助金」、業務効率化などを支援する「IT導入補助金」を実施している。生産性向上のための具体的方策については、各都道府県の「よろず支援拠点」での経営相談体制を強化しているので、積極的に活用いただきたい。

従業員への働き掛け

適用拡大により、企業だけでなく従業員にも負担が生じる。特に、配偶者の扶養に入っており、保険料を負担していない従業員が、扶養に留まることを殊更に意識して働く時間を抑えることを防ぐには、どのような対応が必要か。

前回(16年10月)、500人超規模の企業を対象に適用拡大が施行された際のパート労働者の対応は、働く時間を減らした人より増やした人の方が多かった。500人超企業が取った対応の例を見ると、従業員への丁寧な説明が功を奏したことがうかがえる。

社会保険に加入すると、保険料負担がある一方、どのようなメリットがあるか。将来の年金額がどの程度増え、ケガや病気で仕事を休んだ際や、障がいを負った際にはどんな給付が受けられるか。手取り収入は、保険料負担によって、また働く時間を延ばすことによって、どう変わるか。負担とメリットを正しく理解した上で労働時間を延ばす従業員が増えれば、人材確保につながり、従業員の意欲と経験の向上による生産性向上も図れるのではないか。

しかし、人事担当者がこうした専門的な内容を全て説明するのは簡単ではない。そこで、政府として、企業による専門家の活用を支援する事業を実施する予定である。具体的には、社会保険労務士や年金事務所職員などの専門家が事業所訪問を含む個別支援を行う。

なお、従業員に対して丁寧な説明を行った上で、適用拡大の施行を待たず、任意で適用拡大を選択した場合には、「キャリアアップ助成金」による支援を受けることも可能となる。

適用拡大を単に負担増ではなく前向きな変革につなげるチャンスとして捉え、こうした支援策を積極的に活用いただきたい。

(厚生労働省 年金局年金課)

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厚生労働省年金局年金課

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