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年金制度改正のポイント 第1回 高齢期の経済基盤強化

年金制度改正法がこのほど成立した。今回の年金改正の全体像、適用拡大の具体的内容、その影響やメリットなどを3回にわたって解説する。

被用者保険の適用拡大

先の通常国会において、2020(令和2)年度年金制度改正法が成立した。

今後の社会・経済の変化を展望すると、現役世代の人口の急速な減少と平均寿命の伸長を背景に、特に高齢者や女性の就業が進み、これまでよりも長く多様な形で人々が就労することが見込まれる。今般の年金制度改正は、こうした社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤を充実させることを図るものだ。

そうした観点から、老後生活の基本を支える公的年金制度については、まず、多様な就労を年金制度に反映するため、被用者保険の適用拡大を実施する。具体的には、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件(現行、従業員数500人超)が段階的に引き下がり、22年10月に100人超、24年10月に50人超となる。賃金要件(月額8・8万円以上)、労働時間要件(週労働時間20時間以上)、学生除外要件については現状維持、勤務期間要件(現行、1年以上)については実務上の取り扱いの現状も踏まえて撤廃し、フルタイムの被保険者と同様の2カ月超の要件が適用されるようになる。

加えて、5人以上の個人事業所の適用業種に、いわゆる士業が追加される(具体的には、弁護士・司法書士・行政書士・土地家屋調査士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・弁理士・公証人・海事代理士の10業種の追加を見込んでいる)。

多様なニーズに対応

また、就労期間の延伸による年金の確保・充実のため、在職中の老齢厚生年金受給者の年金額を毎年定時に改定する在職定時改定が導入される。また、特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準が現行の28万円から47万円に引き上げられ、支給停止とならない範囲が拡大。さらに、現在60歳から70歳までとされている年金の受給開始時期の選択肢が、60歳から75歳までに拡大される。

併せて、多様な老後生活のニーズに対応するため充実・普及を図ってきた私的年金についても、就労期間の延伸による年金の確保・充実のため、確定拠出年金(DC)の加入可能年齢の引き上げと受給開始時期の選択肢の拡大のほか、より多くの企業や個人が制度を活用できるよう、中小企業向け制度の対象範囲(現行、従業員100人以下の企業)の300人以下の企業への拡大、企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)加入の要件緩和などの見直しが行われる。

なお、昨年の財政検証結果では、現行制度においても、経済成長と労働参加が進むケースでは、引き続き所得代替率50%以上を確保できることが確認されている。その上で、オプション試算において、被用者保険のさらなる適用拡大などにより、一層年金水準を充実させられることが明らかになっている。年金制度改正の結果としては、年金の給付水準を示す所得代替率が、財政検証で示した調整後の所得代替率と比べて、0・2%程度改善する見通しだ。

これらの改正項目の中でも重要性が高く、また経営者の皆さまにとっても関心の高い被用者保険の適用拡大について、次回、さらに詳しく説明する。

年金制度改正法の詳細は、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.htmlを参照。

(厚生労働省年金局)

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厚生労働省年金局年金課

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