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「下町育ちの再建王」の経営指南 「あったらいいな」を形にする

アベノミクスの成長戦略の一つとして、非上場会社に対しても一定のルールで投資ができるようになりました。一般には『株式投資型クラウドファンディング(サービス)』と呼ばれています。その取扱業者(第一種少額電子募集取扱業者)として、日本で最初に登録承認を受けた、日本クラウドキャピタルの専務取締役松田悠介さんと先日、話をする機会がありました。私が、「松田さんは投資対象としてどんな会社を選びますか?」と尋ねたところ、「あったらいいな、と思う会社ですね」と答えられました。これを私のフィールドでマーケティング的に言うと、「あったらいいな」という商品やサービスの開発が、有望ということになります。

この話を伺った数日後に、東北復興ボランティアをきっかけにして、今も支援させていただいている岩手県一関市の『世嬉(せき)の一酒造』を訪問した際に、このことを伝えました。

同社は、『いわて蔵ビール』というブランドが好調で、地元一関産の山椒(さんしょう)の実を使用して醸造した『ジャパニーズスパイスエール山椒』(※)などのクラフトビールが海外でも評判がよく、数々の賞を受けています。アメリカをはじめシンガポールなどのアジア諸国にも、山椒を使う斬新な視点のビールを輸出している、発想が柔軟な会社です。あったら面白いなというビールの「あったらいいな」で成功しているわけです。私は、「あったらいいな、の日本酒も作ってみれば」と提案したのですが、日本酒は本業中の本業なので、守らなければならない伝統やタブーがあって難しいようでした。こんな元気な会社でもそうなのか……と少々驚くと同時に、世界を視野に勝負に出た、あの蔵元の発想を思いだしました。

あの蔵元とは、皆さまもご存じの日本酒『獺祭』を作っている山口県岩国市の旭酒造です。少子高齢化や若者が酒を飲まないなどで飽和状態の国内マーケットではなく、欧米マーケットをターゲットとして、白ワインのように飲める日本酒を、杜氏抜きで自社開発。そしてソムリエを通して欧米に広めたのです。この『獺祭』を皮切りに、日本酒が世界のアルコールマーケットに入り込んでいるのを見ると、歴史を変える快挙といえます。

それぞれの業界にはそれぞれの常識があります。私はその思考回路を“業界脳”と呼んでいます。世の中が変わり時流が変わると、お客さまの嗜好(しこう)も変化し、それに伴い業界の歴史的常識や、タブーも変わっていくのです。

この“業界脳”を脱ぎ捨てて世界を見つめれば、「あったらいいな」は案外、掟破りのタブーに潜んでいるのかもしれません。

※ジャパニーズハーブエール山椒、ジャパニーズエール山椒とも表記される

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 昭和22年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。59年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。平成12年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。22年には代表取締役会長に就任。25年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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社名:株式会社 風土

TEL:03-5423-2323

担当:髙橋

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