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コラム石垣 2017年11月1日号 丁野朗

1970年前後の激甚な公害の時代、硫黄酸化物や窒素酸化物などの排ガスは、その排出量が制限された。いわゆる「総量規制」である。

▼例えは悪いが、近年のインバウンド観光客の急激な増加にも、こうした考え方を導入することが必要になってきた。特に訪日客の多い京都では、市民が利用するバスが日常的に大混雑し、違法民泊が増加するなど「観光公害」の声も出始めている。古都の情緒を象徴する祇園新橋エリアでは、あまりの混雑に、27年間続いてきた夜桜のライトアップが中止に追い込まれた。

▼鎌倉市では、週末に押し寄せる観光客で、生活エリアからマイカーが出せず、救急車など緊急車両も身動きが取れないといった状況に、これ以上の観光客数増加を抑制しようという動きもある。

▼こうした動きは海外でも同様だ。スペイン・バルセロナは人口の20倍に当たる3200万人の観光客に対して排斥デモが発生した。こうした動きは、イタリアのベネチアやノルウェー・ロフォーテン諸島、イギリス・スコットランドなどでも深刻化している。

▼昨年3月に取りまとめられた政府の「明日の日本を支える観光ビジョン」では、2020年に現在の2倍に当たる4000万人、2030年には3倍に当たる6000万人の訪日外国人客を誘致するという目標が示された。

▼観光立国はわが国の目標としては大いに歓迎する。しかし、急激な環境変化が生態系を乱すように、観光客の急増が地域や国民生活に及ぼす影響をきちんと管理する「観光」アセスメントの手法が不可欠であろう。観光が地域の持続的活性化につながるためにも、いまこそ観光に係る「成長管理」の手法が求められているものと言える。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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