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コラム石垣 2017年10月21日号 宇津井輝史

誰が初めに言ったのかは知らぬが、日本人が過大評価しているものが3つあるという。オリンピックとノーベル賞、そして国連である。

▼オリンピックは国威をかけた祭典だからメダルの価値が高いのは確か。だが、サッカーではワールドカップを嚆矢とする。各競技の世界選手権のメダルもほぼ等価値なのに、日本では五輪メダリストだったか否かにこだわりすぎる。

▼ノーベル賞は各分野の偉大な業績を顕彰するイベント。特に科学3部門は人類の進歩への確かな研究成果を、私たちが目の当たりにできる機会でもある。日本人の受賞者が出れば誇らしい気持ちにもなる。だが報道ぶりはいささか過熱気味。授賞式間近のストックホルムで、日本人受賞者を追いかける大勢の報道陣に、何があったのかと現地の人は戸惑いを隠せないらしい。

▼国連は日本では国際連合と訳される。だがユナイテッド・ネイションズという原語をそのまま訳せば「連合国」。そう、第2次世界大戦で勝者の側に立った連合軍を構成する国家が、戦後の国際秩序を維持管理するために設立させたのが国連の出自なのである。その国連を、まるで世界政府のごとく信奉する人がこの国に少なくないと聞く。第1次大戦後に発足した国際連盟の方はそれに近い性格を帯びていたが、第2次大戦で瓦解した。

▼それにもかかわらず国連は、数ある主権国家を超えて統べる政治的権威が存在しない世界の中で、唯一の権威ある調整機関だ。第2次大戦の敗戦国だった日本は、設立の経緯から安保理の常任理事国になれずともずっと貢献してきた。国連の平和維持活動がなかったら、世界はずいぶん違ったものになったはずだ。いま試されているのは、紛争を防ぐ力だろう。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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