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コラム石垣 2018年3月1日号 宇津井輝史

仮想通貨は通貨なのかとの疑問が消えない。確かに取引所に口座開設を申請し、アカウント作成が完了して円と交換したコインを手に入れれば、現金と同様に取引ができるようになる。だが手元に紙幣や硬貨があるわけではない。チャージして電子的に円を使う電子マネーと違うのは、仮想通貨はインターネット上の電子データに過ぎないという点だ。

▼仮想通貨はいま世界に1千種もあるという。確かに送金の速さ、コストの安さなど国際間取引の決済機能は画期的だ。国家と無関係の金融システムゆえに易々と国境を超える便利さと裏腹に、仮想通貨には各国中央銀行が発行する法定(リアル)通貨の持つ信用力はない。匿名性の高さが資金洗浄に悪用されては大変と、各国は規制に動く。独仏はG20に規制を提案し、インドや中国は強力な規制に乗り出した。

▼だが昨年1年間で、ビットコインの価値が20倍、不正流出のあったNEM(ネム)が200倍と聞けば、仮想通貨は明らかに投機の対象である。通貨であるより一種の有価証券だ。データ改ざんや偽造防止のシステムが「通貨」の安全を支えているとはいえ、管理の甘い取引所へのサイバー攻撃による盗難も相次ぐ。

▼技術的には未成熟の仮想通貨だが、一時のブームと考えてはなるまい。自然発生的に生まれたとはいえ、思想的背景がある。ただの紙切れに過ぎない紙幣は、国民全員がそれを価値と認めているからお金になる。仮想通貨は一国の国民を超えた「グローバル経済」という共同幻想の上に成り立つ。取引を支えるブロックチェーンという技術は、そもそも国家権力から自由になりたいという自由主義から生まれた。通貨以外の分野にも応用しうる技術なら健全に育てたい。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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