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コラム石垣 2018年3月11日号 丁野朗

2017年の訪日外国人客は、対前年比19%の増加で2869万人に達した。16年3月に新たに定めた目標値(20年までに4000万人)も、このままの伸び率が続けば、その達成もいよいよ視野に入ってきた。

▼その目標値達成のために三つの視点と10の改革が示された。その目玉施策の一つが文化財の活用である。これまで、十分な活用ができていなかった文化財を大胆に活用し、地方活性化の切り札にしようという戦略である。

▼すでに赤坂離宮や二条城などは公開が始まっているが、文化財の、さらなる抜本的な活用も検討されている。その象徴の一つが、重要文化財の旧奈良少年刑務所をホテルに転用する「監獄ホテル」である。奈良少年刑務所は、明治41年に「奈良監獄」として設置。明治政府が造った五大監獄の一つで、昨年2月、国の重要文化財に指定された。日本遺産に認定された文化財に泊まる「日本遺産ホテル」の構想なども同じである。

▼しかし、文化財の大胆な活用には、もう一つの背景もある。これまで文化財の保全を担ってきた地域コミュニティーの力が弱体化し、代わって公的資金の投入が不可避となっていることである。わが国には、国指定の国宝1110件、重要文化財1万3166件(本年2月現在)など、実に多様な文化財がある。ほかに都道府県・市町村による膨大な数の文化財もある。その数は年々増加する一方で、これらに投入する公的資金は、もはや限界を迎えている。

▼地域の祭りや山車など有形無形の文化財は、これまで地域コミュニティーの力で維持・活用されてきた。それも限界である。文化財は、もはや「活用なければ保存なし」の選択を迫られているのである。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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