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コラム石垣 2018年3月21日号 中村恒夫

厚生労働省は働き方改革の一環として、副業・兼業の促進を目指している。多くの企業は副業や兼業を認めていないが「やってみたい」と希望する人は年々増加しているという。個人のスキルアップや所得の増加などが狙いとみられる。

▼企業にとっては、副業・兼業を認めると、社内情報の漏えいにつながらないか、という疑念があるほか、繁忙時の労働力確保の阻害要因になると懸念する向きもある。同省はモデル就業規則を提示し、そうした不安の払しょくに努めているが「労務管理が一層複雑になる」と危惧する声は当面、消えそうにない。産業界全体としては、長時間労働是正への取り組み強化を優先することになろう。

▼これに対し、リクルートワークス研究所の萩原牧子主任研究員は「副業を持たせたら勤務時間の短縮につながった企業もある」と、その効用にも目を向けるべきだと指摘する。副業に時間を割くために、生産性向上につながる可能性があるわけだ。

▼一方で、人材不足に悩む中小・ベンチャー企業にとっては、この流れは朗報と言える。特定のプロジェクトを立ち上げた際、期間限定の契約社員を募集しても、知名度や待遇が劣り、期待した人材が集まらない例は珍しくない。ただ対象業務がネット経由で完遂できるのなら、外出しが可能になる。これを副業として請け負う人材が数多くいれば、委託できる範囲が広がるわけだ。

▼課題もある。萩原さんは「大企業で働く人を狙う場合、ベンチャーだからこそ経験できる業務を整理し伝えることが大事」と話す。社員でなくてもできる業務は何かを分類し、外部委託する際のアピールポイントを規定することは、経営全般の再点検にも効果があるだろう。

(時事通信社取締役・中村恒夫)

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